サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2023年8月 6日号
「万世一系」の価値観が河野太郎や木原誠二の「大失敗」を許す?
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牧太郎の青い空白い雲/912

 大日本帝国憲法の第1条には「万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」とある。「万世一系」とは永久に一つの系統が続くこと。日本は「万世一系」で天皇制を護持する国。民間でも「2代目」「3代目」が次々に登場してそれなりに成功する。「血筋」がモノをいうのだ。

 政治の世界では「世襲」が圧倒的に強い。世襲で地盤、資金力を持たなければ、まず当選できない。だから「日本国の要職」は世襲組が独占する。1991年のバブル崩壊以降(俗に言う「失われた30年」)、首相に就任した16人のうち11人が「世襲議員」だった。安倍晋三元首相も、岸田文雄首相も「3代目」である。

 この30年間、日本は高度経済成長期や安定成長期のような「豊さ」がまったく見られず、経済は低迷。日本人の大半が貧乏人になった。いちいち説明するのがイヤになるほどあらゆる分野で日本は「三流国」になってしまった。

 30年間の「世襲組の独占」が日本をダメにした。例えば、河野太郎デジタル担当相である。

 マイナンバーカード問題で窮地に追い込まれた河野さん。ボクは父・洋平さんと親しいので「応援しよう」と思っていたが、「マイナンバー制度は民主党政権がつくった。おまえが始めたんだろ、と言い返したくもなる」と言い出した。

 あまりに子どもっぽい。

 ご本人は「頭が良い」と思っているが、大臣になるたびにドジばかり。安倍内閣の消費者担当相の時は「消費者庁を徳島県に全面移転する」と言い出したり、外相の時は「専用機を買え!」とねだったり......。日露交渉は蚊帳の外。ともかく「実績ゼロ」なのになぜか「要職」を続ける。揚げ句の果て、コロナワクチン接種担当相で失敗、今度はデジタル相で大失敗!である。

 でも、本人は「ポスト岸田」の有力候補!と思い込んでいる。祖父・河野一郎元農相、父・河野洋平元衆院議長の血筋と地盤と資金力がなければ、議員になれなかったことに気づかないのだ。

 例えば、木原誠二官房副長官である。「隠し子」騒動に続いて『週刊文春』に「木原さんの妻が、かつて結婚していた男を殺した容疑で取り調べを受けていた!」と書かれた。記者会見をして「事実」を話せばよいのだが、「名誉毀損(きそん)で訴える!」と言うだけ。政治家の「責任」に気づかない。

 周囲から「おぼっちゃまだから、逃げられる?」と囁(ささや)かれているそうだが、そういえば木原さんも「万世一系」組? 高祖父に諫早銀行頭取を務めた木原頼三さん、母方には台湾銀行副頭取、日商社長を歴任した下坂藤太郎さん......。しかも、実兄はみずほフィナンシャルグループ社長の木原正裕さんと華麗なる家系パワー......。

「世襲議員」が日本をダメにしている。

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