サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2023年7月23日号
なぜ、新聞やテレビは「官房副長官の不倫」を報道しないのか?
loading...

牧太郎の青い空白い雲/911

「週刊誌にあることないこと書かれ、もうダメだ。すべてが虚(むな)しくなった。全員で死のう。生きる意味がない。寝ている間に死ぬのが一番楽だろう」

 母親の〝自殺〟を手助けした!として逮捕された歌舞伎俳優の市川猿之助容疑者は、一家心中を決意した「心境」をこう話しているらしい。

 歌舞伎の世界では、近松門左衛門の昔から「曽根崎心中」「心中天網島(てんのあみじま)」「心中宵(よい)庚申(ごうしん)」など心中物が大ヒット。義理を立て一緒に死ぬ「心中立て」は美しい!と思い込む向きは多いが......。「心中立て」の原因が「週刊誌のセクハラ報道」と聞かされると情けなくなる。

 セクハラは恥ずかしい。でも、記者会見して「セクハラと誤解されたのは、私の不徳の致すところ。お詫(わ)びしたい」と頭を下げればよいじゃないか。最悪でも「出家します」と大見得(みえ)を切れば、世間は許してくれるだろう。

 一家心中なんて時代遅れだ。スーパー歌舞伎には似合わない。

 大体、有名人はいつ何時「スキャンダル」が発覚するか分からないから、「上手な言い訳」を用意しているものだ。

 先日、「隠し子騒動」を『週刊文春』に報じられた木原誠二・内閣官房副長官を見習えばよい。

 木原さんは、親しい女性の高級マンションをしばしば訪問。早朝、彼女の運転するベンツで首相官邸に出勤する。その姿を『週刊文春』が目撃していた。しかも、彼女との間には「可愛い娘」がいる。

 堂々としたスキャンダルだ。

 実は、木原さんの「隠し子」騒動は『週刊新潮』(2021年12月23日号)でも、報じられている。

 その時も今回も、木原さんは周囲に「病気と闘う女性を仲間みんなで支えている。隠し子なんて真っ赤な嘘」と言い訳した。何やら〝美談仕立て〟ではないか。ただ前回と違うのは、この女性の代理人弁護士が、司法記者クラブに「その娘は、認知は受けていないが、木原氏との間に生まれたことを認める文書」を送ってきたのだ。

 木原さん、コレで万事休す。真実を明らかにするしかない!と思ったのだが、全く動じない。

 当方から見れば「往生際」が悪すぎる!

 でも、四面楚歌(そか)の木原さんだが「味方」がいる。週刊誌がいくら騒いでも、大手メディアが「木原不倫」を一切報じないのだ。

 あるテレビの記者さんは「不倫騒動のような低レベルの話は扱わない」と言うけれど、広末涼子さんの不倫は大々的に報道して、視聴率を稼いでいるのに......。

 猿之助さんに、もう一つ教えておく必要がある。

 新聞、テレビは時に「不公平」なのだ。木原さんのように要所要所に「スキャンダルは書くな!」と圧力を掛けることが必要なんだ。

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム