サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2023年5月21日号
報道の自由度ランキング71位の日本だから「無投票」が増える
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牧太郎の青い空白い雲/904

 長野県軽井沢町の「G7=主要7カ国外務大臣会合」の〝様子見〟取材などで、県内に長めの滞在をして驚いた。

 長野県民は「まじめで民主主義を大事にする」と思い込んでいたのだが......。統一地方選の後半戦、七つの町村長選で三つが無投票。町村議選は27町村で行われ、10町村が無投票。四つの村は立候補者が定数を1下回り、定数割れになった。

 それぞれ、事情はあるとは思うけれど......。多分、長野県でも農村部は保守的な地盤。特定の有力者が話し合いで候補を選ぶ。現職が引退しない限り、新人に勝ち目がないのだろう。で、無投票当選になる。

 そう思って東京に帰り、新聞を読むと、関東5県の県議会議員選挙も173選挙区のうち56選挙区で88人が無投票当選。約460万人の有権者が投票できなかった。都市部でも「無投票」が激増しているのだ。東京のど真ん中「中央区」の区長まで無投票当選だった。

 投票したいけれど投票所に行けない! これも困るが、人々が「投票」というシステムを忘れてしまう。「民主主義の崩壊」ではないのか?

 無投票が続けば「見えない独裁」が進行する。恐ろしくなった。

「無投票」が増える原因は①町村部などでの人口減少②議員報酬などの低さ③区割りなどの選挙制度―などと言われているが、国政で野党が「多弱化」し、与党が長年占める議席を奪うほどの勢いがないのかもしれない。

 しかし「無投票」の最大の原因は「メディアの日ごろの報道」にあるように思えてならない。新聞も、テレビも、雑誌も「地方自治」に無関心。ほとんどの情報が自治体の「発表もの」ばかり。記者クラブ(に加盟するメディア)が情報を独占して、記者はまるで努力しないように見える。地道な調査報道や「衝撃的なスクープ」のような記事はほとんどないから、住民は「地域」に無関心になる。

 毎年公表される「国境なき記者団」(本部・パリ)による「世界報道の自由度ランキング」で、日本は180カ国中の71位。下位に評価される理由は幾つもあるが「記者クラブ」という権力寄りの仲良しグループの存在が批判されている(ちなみに、アジアでは台湾が38位、韓国が43位)。

 ともかくメディアが「地域もの」に力を入れないと、「無投票」はもっと増えるだろう。

「無投票」を避けるためには「議員定数」を大幅に減らすしかないだろう。

 もっとも、多すぎる国会議員の数(日本は717人で列国議会同盟の調べで世界6位、ちなみに米国は535人で24位、韓国は300人で45位=2016年)を減らすキッカケになるとよいが(笑)。

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