サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2023年4月23日号
貧乏国ニッポン「定年は75歳」という時代がやって来るぞ!
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牧太郎の青い空白い雲/901

 22歳で定年?

 バカ言っちゃ、困る。

 こんな経営者本位の「やり方」が罷(まか)り通るなんて......。

 ジャニーズ事務所が導入した「ジャニーズJr.の22歳定年制」。満22歳に到達後の最初の3月31日までに事務所側と話し合い、活動継続の合意に至らない場合は、ジャニーズでの活動は終了!だそうだ。

 確かにジュニアは大所帯。ジュニアの中で「Aぇ!group」といった人気ユニットに入っていない「普通の子」がたくさんいる。事務所は経営的に、彼らを「抱えきれない」のか。

 しかし、これまでも、これからも、事務所は彼ら若者を使って商売を続ける。芸能界だからいろんな見方があるだろうが、経営者と従業員の観点からみれば、搾取関係と同じじゃないか!

 だいたい、「定年制」は不平等である。

 明治時代以来、日本に「定年制」はあるが、たとえば「三井財閥」。1936年、持株会社「三井合名」の筆頭常務理事、池田成彬さんが「筆頭常務理事、参与理事は満65歳、常務理事及び理事は満60歳、使用人は満50歳(あるいは55歳)を定年とする」と決めた。

 つまり、定年制は経営者と労働者を差別するシステムだともいえる。

 戦後の59年、第2次岸内閣時代に国民年金法成立。このころ、日本人の平均寿命は(60年当時)、男性65・32歳、女性70・19歳だった。定年後の10年間ぐらい悠々自適の毎日を送れる!という理由で(三井をまねて)会社員の「定年は55歳」。同時に、年金をもらうようになった。

 その後、「定年の時期」は平均寿命と「国の台所の都合」で変遷していく。

 年金(厚生年金)の支給開始年齢が65歳に引き上げられたこともあって、現在では高年齢者雇用安定法で企業が定年を定める場合、60歳を下回ることができないとされている。

 企業によって、「役職定年」などを決めるところが多いようだが、「人生100年時代」がやって来れば、「定年は75歳」ぐらいになるだろう。

 年金支給の時期を大幅に「遅れらせる」必要があるからだ。

 貧乏国のニッポン人は(良いか悪いか、判断できないが)80歳になっても働くようになるかもしれない。

 もちろん、臨時社員や派遣社員、契約社員、パートタイマーやアルバイトといった非正規雇用労働者が増えているから、「定年」と無関係な人が多くなるだろう。

 しかし「退職金」がもらえない非正規雇用の人は死ぬまで働かされる?

「搾取構造」はまだまだ続くのだ。

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