牧太郎の青い空白い雲/898
日本人は「お祭り好き」である。
昨今は「朝から晩まで侍ジャパン」「朝から晩まで大谷翔平、ヌートバー」。
WBCの初戦、日本は中国に8対1で快勝したが、テレビの平均世帯視聴率は41・9%(関東地区)。北海道では何と49・6%、瞬間最高視聴率は56・1%。概(おおむ)ね日本人の半分が「WBC祭り」に夢中になった。
いつも「冷めた考え方」をしている人もいる。大勢の列に並んだりするのを「時間がもったいない」と感じる人もいる。でも、多くの日本人が侍ジャパンを応援して、ハラハラドキドキ......。大谷翔平の笑顔に、ヌートバーの超美技に喜び感動した。
もちろん、僕の周囲には「自分は他人とは違う」と言い放つナルシストも多いけど(笑)、総じて右を向いても、左を向いても「負けるな!ニッポン」である。
「お祭り」は経済活動である。カネを使わないと「お祭り」に参加した気分になれない。
僕の場合、大谷選手の直筆サインボールが欲しくなった。いろいろ調べてみたら「2021年MVP受賞記念」のサインボールが発売中。「ヤッた!」と思ったのだが......。お値段が「価格34万9800円」。貧乏人にはとても無理な金額だが、お金持ちはいくつも買っているらしい。
で、テレビ観戦中、ちょっと高額なウイスキーを飲むことにした。
ともかく、少しでもカネを使いたい。そんな気分だ。
「阪神の奇跡の優勝」など数々の「お祭り」の経済効果を試算する関西大・宮本勝浩名誉教授(理論経済学)は今回、「侍ジャパンが優勝すれば、国内での経済効果は約596億円にのぼる!」という試算を発表した。新型コロナ、ウクライナ侵攻、インフレ......。暗い話題ばかりだが、596億円は日本人を元気にさせるだろう。
でも、どうだろうか? 今回も教授の予想通り「お祭り」で多額のカネが動くのだろうか?
知り合いの若者が「日本が勝っても乾杯しません。その分だけ、卵を買います」と笑うのだ。
医療機関に勤める彼は奥さん、それに保育園に通う子ども2人の4人暮らし。どちらかと言うと、経済的に恵まれた家庭だが、このところ、値上げラッシュで家計費が底をついている!と言うのだ。
「電気代ももちろんですが、鳥インフルエンザもあって卵が昨年の2倍ですよ。お酒なんて飲めない」
高校の時、野球部に所属した彼は、WBCを一番楽しみにしていたのに......。
帝国データバンクによると、この3月、3000品目超の値上げ。4月には新たに約5000品目が値上げされる予定。
無敵の侍ジャパンも「物価高」に負けるかもしれない。