サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2023年3月 5日号
国民は悠仁さまの「東大受験」を歓迎するだろうか?
loading...

牧太郎の青い空白い雲/894

 受験の季節になると、決まって「人生最初の屈辱」を思い出す。

 明治大付属中学校を受験して、ものの見事に落ちた。で、格下?の日本大第一中学に入ったが当時、東京六大学野球で連戦連勝の「伝統のメイジ」に入れず、かなり落ち込んだ。

 今考えるとろくに「受験勉強」をしなかったのだから仕方ない(実は「学業より友達」の日大一中一高の校風が気に入って、楽しい青春だったけど)。で、息子には「ホンの少しだけ勉強したほうが良いぞ」とアドバイスして、長男は麻布中学に入り「勉強大嫌いの次男」はオヤジと同じ日大一中に進んだ。

 まあ、受験は運不運。でも合格、不合格が人生を微妙に変える。中学受験で一番難しいのは男子中高一貫校の「筑波大付属駒場(筑駒)」らしい。「開成」「麻布」など名門校に合格しているのに「筑駒」を選ぶ受験生が毎年100人ぐらいいるそうだ。筑駒中の入試は有名私立中の2日後に行われるのだが、その合格発表前に私立の入学手続きが終わる。私立に入学金を納めた後、筑駒中合格の知らせ。多くの「金持ち」は喜んで、私立の入学金をドブに捨て「筑駒」を選ぶ。

「開成」「麻布」が実は〝すべり止め〟? 「本当の秀才は筑駒に行く!」と後輩の受験担当記者に聞かされた。

 なぜ「筑駒」が人気なのか?

 中学定員が120人。高校からの入学が40人。究極の少数精鋭。国立なので(中学は)入学金や授業料がタダ。それより「決め手」は東大合格の実績である。昨年の卒業生のうち、97人が東大に合格した。生徒数の約60%である。

 まるで「東大付属」みたいだ。

 今年春から、悠仁さまは、この「筑駒」ではないが、筑波大付属の高校2年生になる。ごく普通に考えれば、悠仁さまが「東大」を目指しても不思議ではない。学業も素晴らしい。でも、皇位継承者だから大学共通テストなしの内申書だけで入学させる!というわけにはいかないだろう。「未来の天皇」でも公共の場で試験を受ける。

 もし不合格になったらどうしよう。悠仁さまに「屈辱的な思い」が残るとしたら......。国民だって落胆する。東大受験はリスキーだ。

 何でもかんでも東大!という価値観が日本をダメにしている。先日の日銀トップ人事。新総裁候補は東大卒の経済学者。二人の副総裁候補は東大卒の財務官僚と日銀の生え抜き。「東大」に偏った人事のように思えてならないが、その「東大的発想」が政治的にも経済的にも日本をダメにした!と僕は思う。

「未来の天皇」が東大卒である必要はない。むしろ、東大とは違う「自由な価値観」が必要だろう。

 大体、「天皇」は国民と競い合う存在ではないはずだ。恐れ多い言い分ではあるが、「東大だけが人生ではない!」と思っている。

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム