サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2023年2月19日号
「山本太郎」の輪番制は立派な政治手法だが「何」ができるの?
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牧太郎の青い空白い雲/893

〝うつ病〟のために参院議員を辞職した浅草キッドの水道橋博士さん。彼が所属する「れいわ新選組」は残りの任期を「比例代表で落選した5人」が〝代わりばんこ〟に務める!と言い出した。

 繰り上げ当選を決めた大島九州男さんを手始めに、長谷川羽衣子、辻恵、蓮池透、依田花蓮の各氏が「当選」と「辞職」を繰り返す。

「ローテーション制度」というのだそうだが......。奇想天外、奇妙奇天烈(きてれつ)......。普通の人では考えもつかない発想である。いかにも山本太郎(代表)らしい問題提起だ。

 衆院議員は任期4年。解散で任期は大幅に短縮されることもある。対して、参院議員は任期6年。腰を据えてやってもらう。参院で与党会派が過半数だった場合、両院で同じような議論が繰り返され、参議院は衆議院のコピーという批判もあるが......。ともかく2院制には「慎重な議論」が求められる。そんな憲法の期待を平気で裏切る「輪番制」。アチコチから批判の声が上がってもおかしくない。

 しかし、である。江戸時代は「輪番制」が現実に実績を上げた。

 例えば、越後の石神村(現上越市)の「庄屋」の決め方。幕府や藩と村をつなぐ「庄屋」は今で言えば「村長」のようなもの。「庄屋」はその地域で最も格式が高い「一つの家」が、代々引き継ぐ世襲制が圧倒的に多かった。だが、石神村では、庄屋を1年ごとに交代する「輪番制」を選んでいた(林泉寺文書「相究メ申証文之事」)。

 だいたい江戸幕府の最高職「老中」(首相のようなもの)も「輪番制」。定数4ないし5で、普段の業務(大目付・町奉行・遠国奉行・駿府城代などを指揮監督)は毎月1人が担当。江戸城本丸御殿の御用部屋と呼ばれる部屋に詰めていた。時代劇で人気の「大岡越前」「遠山の金さん」(遠山金四郎景元)などの町奉行も「輪番制」(元禄15年~享保4年の間は北、南のほかに「中町奉行所」というのもあったらしい)。

 要するに、複数の人が順番を決めて交代で担当する「輪番制」は立派な政治手法? 今でもマンションの管理組合や地域の自治会などで使われている。

 問題は「議員の地位は属人的か、属党的か?」である。比例代表選挙で当選した者が離党しても簡単にその地位を奪えない。だから「議員の地位は属人的」と解釈できるが、一方で有権者は「政党名投票による比例選挙」で「党」を選んでいる。比例選挙で当選した議員の地位は「人」にあるのか、「政党」にあるのか?

 この矛盾を「れいわ新選組」は指摘しているのだ!

 まあ、これは「実験」だろう。

 目に見える形で「実績」を残すことができるのか? できなければ、山本太郎は単なる「変な人」で終わってしまう。〝れいわ輪番制〟は少数政党の「賭け」である。

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