牧太郎の青い空白い雲/892
毎月20日ごろ、定期預金の集金にやって来る信用金庫の若者が昨年末、「僕、同棲(どうせい)を始めました」と〝報告〟に来てくれた。
別の信用金庫に勤めている「お父上」と一緒に住んでいた東京・柴又の実家から脱出。大好きな彼女と板橋本町のマンションで共同生活を始めたらしい。
おめでとう! とは言ってみたが......。結婚すればよいのに? ちょっと疑問だった。
意見が合わず、しょっちゅう喧嘩(けんか)腰になってしまう。でも一緒に競馬場に遊びに行ったこともある「古い友人」が正月、何年かぶりに仕事場にやって来た。
「倅(せがれ)さんは元気か?」と〝自慢の東大卒〟の消息を尋ねると、「アイツ、同棲を始めた」。
こちらも「同棲」である。
当方などは、大学4年生の時、冒険心で「七つ年上の女性」と結婚したのに......。
友人は「我々の時代と違って、圧倒的に同棲を選ぶ若者が多い」と言う。知らなかった。
友人の「解説」によると......。一緒に暮らすという点では結婚と同じだが、同棲は相手を見きわめたい! 予想外の失敗を回避したい! という若者にとっては好都合?
「一緒に住むことで、家賃や水道光熱費などを折半すれば、浮いたカネを貯金に回せる」。なるほど。なるほど。
元々、同棲と結婚では「責任の大きさ」が違う。「もしもの場合、別れるのも選択肢」と考えればある程度、気持ちに余裕が持てる。
同棲は居心地が良い。
でも、お互いに結婚の意思があれば「○年間同棲をしたら結婚する」という「ルールみたいなもの」を作っている場合も多いらしい。
ある統計によれば、同棲を始めた70%が「1年未満」で結婚するらしいから「結婚の予行演習」のようなものなのかもしれない。
もちろん「事実婚」を続ける向きも多い。「事実婚」には①姓の変更が不要②別れても戸籍に履歴が残らない③相手の親戚付き合いから距離が保てる④法律婚とほぼ同等の権利・義務が認められている......。メリットがいくつもある。
友人は「法律婚でも事実婚でもいいけど、いくら好きでも貧乏で一緒になれない若者がたくさんいる。結婚できても子どもが産めないケースが圧倒的だ」と断言する。
その通りだ。
日本の年間出生数が100万人を下回り「ミリオンショック」と騒がれたのが2016年。それが、3年後の19年には80万人台に突入。21年は81万1622人。22年は確実に80万人を割り込む。
日本は「子どもが産めない国」になってしまった。
「どうすりゃいいのさ 思案橋」と友人は古い演歌を歌ったが......。
バカげた「防衛費大増税」の岸田内閣を辞めさせるしかないぞ!二人の意見は初めて一致した(笑)。