サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2022年12月11日号
安倍銃撃の山上が精神異常で不起訴なら「真相」は闇から闇へ?
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牧太郎の青い空白い雲/886

 浅沼稲次郎暗殺事件をご存じだろうか?

 1960(昭和35)年10月12日、東京都千代田区の日比谷公会堂で開催された「自民党・社会党・民社党3党首立会演説」の最中、浅沼稲次郎・日本社会党党首が17歳の少年・山口二矢(おとや)に刺殺された。

 衝撃だった。当時、中学3年生だった僕は、小説でもない映画でもない「本物の暗殺」に仰天。何が起こったのか? 呆然(ぼうぜん)とした。

 さらに衝撃だったのは、年若い犯人が、事件の3週間後の11月2日夜、東京少年鑑別所の監房の壁に白い歯磨き粉を溶いた液で「七生報国 天皇陛下万才」の文字を書き残し、自殺したこと。事件の「真相」は全て分からなくなった。

 僕が早稲田大の政経学部、吉村正教授のゼミで「行動政治学」を学んだ時も、この暗殺事件を調べてみたが......。浅沼さんは昭和天皇を敬愛しており、山口少年の宗教団体「生長の家」の総裁・谷口雅春さんの支持者だった。

 調べれば調べるほど、この事件がなぜ起こったか? 謎は深まるばかりだった(ちなみに、同じ吉村正ゼミの友人は浅沼さんのお嬢さんと結婚した)。

 3年後のケネディ大統領暗殺事件も「闇から闇」。63年11月22日、米大統領ジョン・F・ケネディがダラス市内をパレード中に銃撃され、死亡した。約1時間後、逮捕された犯人?のオズワルドは2日後にダラス警察署でジャック・ルビーという男に銃撃されて死亡。法廷に立つことはなかった。

 なぜか、暗殺事件の当事者は「裁判の前に」消えていく。暗殺事件はいつも闇から闇である!

 安倍晋三元首相が奈良市で銃撃された事件。殺人容疑で送検された山上徹也容疑者についても「ちょっと気になること」がある。

 山上容疑者は「刑事責任能力」を調べるため、7月25日から鑑定留置されていたが、期間は11月29日までの約4カ月間。それが、来年2月6日に延長された。長すぎる。鑑定留置されると捜査がストップ、捜査段階の身柄拘束期間が非常に長くなってしまう。その後、裁判所は当初の延長認定の決定を取り消し、鑑定留置の期間を来年の「1月10日午後2時まで」としたが、それにしても長すぎる。

 これは僕の勝手な推測だが、検察は「精神異常で不起訴」という〝筋書き〟を選んだのではないか?

 常々、安倍1強体制は「司法」に介入したが、その流れは変わらない。裁判を行うと安倍さんに、つまり政府自民党にとって「都合が悪いこと」が出る可能性がある!と判断したのではないか。そこで「刑事責任能力なし」で不起訴、鑑定留置の後、被疑者は医療機関に入れられ裁判なし!の筋書き? まさかとは思うが「拘置所で突然死」なんてことはご免被りたい。

 日本は北朝鮮でもロシアでもない、「民主主義」の国なのだから。

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