サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2022年10月30日号
回転寿司業界の不祥事は「物価高対策ゼロ」の岸田さんの責任!
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牧太郎の青い空白い雲/881

 握り寿司(ずし)の皿がベルトにのって店の中をクルクルと回転――。中学生の頃「回転寿司」なるものを初めて見た時「これが産業革命なのか?」と思ったのを覚えている。

 大阪の立ち喰(ぐ)い寿司店のオヤジさんがビール製造のベルトコンベヤーをヒントに、客の注文を低コストで効率的にさばく「コンベヤ旋廻(せんかい)食事台」を完成したのが、1957(昭和32)年。翌年大阪府布施市(現・東大阪市)の近鉄布施駅北口に世界初の回転寿司店、「元禄寿司」を開いた。

 以来60年余、寿司の主流は回転寿司!と言われるようになった。

 その市場規模はおよそ7400億円。コロナ禍で外食産業は青息吐息だが、「回転寿司」の売り上げはむしろ上がっている。日本フードサービス協会の調査では、2021年1〜12月で持ち帰り米飯・回転寿司の売り上げは19年比103・9%という。我々は回転寿司のお陰で、比較的安い価格で「活きのいい江戸前寿司」を楽しむことができる。経営者の「工夫」に感謝しなければならない。

 ところが最近、この業界で不祥事ネタが次々と起きている。

 業界1位の「スシロー」(21年9月期、売上高2408億円)がメバチマグロの代わりに、仕入れ値が安いキハダマグロを提供していた〝手品〟が10月に発覚。6月には、ウニやカニの在庫がない店があるのに大々的に宣伝を続け消費者庁から景品表示法違反で再発防止を命じられた。

 業界4位の「かっぱ寿司」は、3位の「はま寿司」の仕入れ値などのデータを不正に取得したカドで社長らが9月、不正競争防止法違反の疑いで警視庁に逮捕された。19年にも業界2位「くら寿司」で、アルバイトの少年がごみ箱に捨てた魚をまな板に戻す動画が公開され、少年らが偽計業務妨害の疑いで書類送検された。まるで、回転寿司業界は「不祥事のてんこ盛り」である。

 だが、この責任、「回転寿司」業界だけにあるのだろうか?「不正競争防止法違反」だとか理屈をこねくり回し、業界を脅している「お上」に責任はないのか?

 たび重なる不祥事の背景には間違いなく「魚の価格高騰」がある。その原因は「円安」「原油高」「新型コロナ」「ロシアのウクライナ侵攻」「気候変動」......。すべて「お上」が手を付けなければならない緊急事態ばかり。はっきり言って、政府の対応は後手後手だ。

 岸田さんに申し上げる。

 旧統一教会の追及も結構だが、年末を前に「物価高対策」に全力を上げなければ、我々は「新鮮なネタ」が命!の日本国独自の「寿司文化」を諦めなければならない。

 まあ、旧統一教会の親密な「ヤマギワ」とかいう「経済再生担当大臣」のクビさえ取れない岸田さんに「回転寿司の瀬戸際」を話しても仕方ないか。

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