サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2022年10月 9日号
旧統一教会問題が引き起こす「創価学会・公明党」の大ピンチ?
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牧太郎の青い空白い雲/879

 人類には三つのタブー(禁忌)がある。殺人、食人、近親相姦。これは永遠の掟(おきて)だが新聞、テレビなどメディアにかかわる人間はその時代、その時代の「報道できないタブー」に立ち往生するものだ。

 1970年代、「鶴タブー」と呼ばれるものがあった。宗教法人・創価学会に対する批判は控えろ!と言う上司がいた。「ガッカイが講として属していた日蓮正宗の紋が鶴。だから鶴タブーという」と大先輩に教えてもらったが、創価学会が日蓮正宗との関係が悪化した77年以降、「鶴タブー」という言葉はほぼ死語に。が、現在でも宗教団体、とくに創価学会(公明党も含め)に関する批判記事の扱いは慎重になる。創価学会は公称800万世帯以上とされる。信者らの不買運動に発展したら大変だ。

 ところが、珍しく週刊誌業界の両巨頭? 『週刊文春』と『週刊新潮』が同じ9月8日の発売号で、「公明党・創価学会スキャンダル」を記事にした。

 新潮の見出しは「『山口那津男代表』がセクハラ口封じ 被害女性が告発!公明党議員の『わいせつ』『妄想性交LINE』」。文春の見出しもほぼ同じだ。公明党の参院議員が創価学会の女性信者に「いま、どんな格好?」から始まり「今日の下着の色は?」とか......。LINEで卑猥(ひわい)なことばかり発信する。我慢できず、女性は公明党に抗議すると、党の幹部は「参院選が終わるまで、黙っていてくれ!」と事実を隠蔽(いんぺい)したと報じた暴露記事である(公明党は「この二つの記事は事実と違う」と主張。損害賠償請求と謝罪広告の掲載を求め、東京地方裁判所に提訴している)。

 真相は分からない。でも......。誰がこのスキャンダルを二つの週刊誌にリークしたのか、その目的は?

 その謎を解く鍵は......。たぶん「旧統一教会」の大騒動と無縁ではないだろう。世間は「インチキ宗教」の存在に驚き、「権力と宗教」の関係を考え直そう!という気分になっている。創価学会・公明党に対しても積極的に報道し批判できる対象になった。そう判断した週刊誌側は「どこにもありそうな女性スキャンダル」をあえてトップ記事扱いにした。日本で一番売れている(と喧伝(けんでん)している)月刊誌『文藝春秋』10月号も〈総力特集〉と銘打って「権力と宗教 統一教会と創価学会」を掲載した。政治と宗教の関係がテーマだ。

 憲法は「国や自治体は宗教と結びついてはならない」とする政教分離という原則を示し、国や自治体などの「公」は宗教の布教などを行ってはならないとしている(憲法20条と89条)。創価学会と公明党の関係は法的にも微妙な存在? 天下党の自民党と連立し、政教一致批判は鳴りを潜めていた。

 自民応援の旧統一教会の選挙活動が槍玉(やりだま)にあがる昨今、「創価学会なら良いのか?」との声もチラホラ。ひょっとすると、今までにない大ピンチを迎えているのかもしれない。

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