牧太郎の青い空白い雲/876
「ウソ(鷽)」という可愛い鳥がいる。
スズメ目アトリ科に所属するウソは「フィー、フィー」と息を吐くように......。弱々しく、澄んだ声で鳴く。だから可愛い。
その昔、人々は口笛のことを「うそ」と言っていたので、この可愛い鳥は「ウソ」。いつも悲しげに泣く。古語に「うそうそと」という言葉もある。「そわそわと」「きょろきょろと」「うろうろと」という意味らしい。
人形浄瑠璃「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」には「月影もるる木の間木の間、うそうそ窺(うかが)ふ同腹中(どうぶくちゆう)」というクダリがある。
月光がもれてくる木の間をきょろきょろと窺う悪事の仲間同士? 泥棒も悲しい商売だ。
現代語の「うそ(嘘)」は「人をだますために言う、事実とは違う言葉」。もっと悲しい。
人気者の生稲(いくいな)晃子参院議員の「嘘」は悲し過ぎた。選挙中に旧統一教会の施設で演説したのか?と訊(き)かれ「駅前の演説で声を掛けられた人に付いて行ったら、八王子の統一教会だった」などと説明した。
選挙の街頭演説は分単位でスケジュールが決まってるのに「どこの誰かも分からない人」について行くなんて......。小学生でも分かる「下手くそな嘘」を喋(しゃべ)る。
気の毒で気の毒で。これは「悲劇」だ。
それに比べて、安倍晋三元首相の「嘘」は明るい。
例えば、妻・昭恵さんの森友学園疑惑を糾(ただ)されて「妻が名誉校長を務めているところはあまたの数あるわけだが、それそのものが、今まで行政等に影響を及ぼしたことはない」と断言する。「あまたある」なんて言うが、彼女が名誉校長になったのは森友学園と加計学園の二つ。真っ赤な「明るい嘘」だ(2017年2月17日の国会審議)。
その上で「私や妻が関係していたということになれば、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめる」と開き直った。
「うそ」というより「ホラ吹き」なのだ。「ホラ」とは漢字で「法螺」。その昔、山伏は「法螺貝」を細工したラッパ?で連絡を取った。「獣除け」にも使ったので、見た目以上に大きな音が出る。
で、予想外に大儲(もう)けをすることを「ホラ」と言うようになったらしいが......。安倍さんの「ホラ」は生稲晃子さんの「悲しい嘘」と比べれば〝年季〟が違う。
〈日本は戦後、民主主義と自由を守り平和国家としての道を歩んできました。この姿勢を貫くことに一点の曇りもありません〉と、何度も何度も、聞かされたが......。安倍さんはこのところ「軍拡一直線」?「ホラの年季」が違う。
平気でカルト集団「旧統一教会」を選挙に利用した〝法螺吹き首相〟を国葬で送るなんて......。「喜劇」としか思えないんだけど(笑)