サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2022年8月21日号
経済同友会が「中小企業の数を減らせ!」と暴言を吐く「ご時世」
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牧太郎の青い空白い雲/874

「経済同友会」をご存じだろうか?

「経団連」「日本商工会議所」と並ぶ「経済三団体」の一つ。終戦直後の1946年、経済の再建を目指し、当時の中堅企業経営者が数人で発足させた小さな団体だったが現在、会員約1500人の大所帯。企業経営者が個人の資格で参加し、何を喋(しゃべ)っても自由。その結果、政府自民党と協調路線を取る「経団連」と比べると「時の権力」と距離を置く。「物言う人」の集まりだ。発足直後の47年8月、「修正資本主義の構想」という表題の経済民主化の提案を発表し、物議を醸すこともあった。

 その提案の柱は、

①企業は経営、資本、労働の三者で構成される協同体とする。

②企業の最高意思決定機関として「企業総会」を置き、経営、資本、労働の三者の代表で構成する。

③企業利潤の分配は経営、資本、労働の三者が対等の権利を有する。

 という画期的なもの。

 さすがに、財界の保守派から「資本主義の否定につながる」と反対意見が多く、機関決定はできなかったが「修正資本主義」という言葉が流行語になった。

 当初の経済同友会はどちらかというと「労働側」に配慮する「リベラル」な団体だった。

 その経済同友会のトップ、櫻田謙悟代表幹事が7月中旬のテレビのインタビューで「とにかく中小企業の数が多すぎる。中小企業を減らせ!」と言い出した。

 何を言っても「お構いなし!」のユニークな気風は分からないではないが、「日本の賃金水準を引き上げるためには、合併するか、大企業の傘下に入るなどして、小企業を脱していくことが必要だ」というのは暴論ではないか? 儲(もう)からなければ廃業すればよい!と言われて、知り合いの中小企業主は「冗談じゃない」と怒り心頭だ。

 日本の経済を支えているのは大企業ではない。資本金1000万円程度の中小企業が、専門分野に特化したノウハウを提供することで経済を動かしている。

 はっきり言って、多くの大企業は中小企業の工夫で「おまんま」を食っている。大「保険会社」に入社して、それなりの出世競争でトップになっただけの人に中小企業のことが分かるはずがない。

 大企業は「優遇税制」の恩恵を受けている。例えば、大企業は株式を持っている子会社から配当金を受けるが、配当金の80%は益金に入れなくて良い(受取配当等の益金不算入制度)。日本人みんなの給料を上げるためには、まず「不平等な大企業優遇税制」をなくすことが先決だ。

 この代表幹事さんは、かねて、「法人税の減税」「消費税17%への増税」「社会保障費の削減」などと〝貧乏人イジメ〟を主張しているが、もしかして経済同友会は経団連以上に「安倍1強政権」寄りになってしまったのか? 残念だ。

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