サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2022年7月17日号
「ゼレンスキー大統領は英雄」「貯蓄から投資へ」の真っ赤なウソ
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牧太郎の青い空白い雲/870

 戦争報道には必ず「真っ赤なウソ」が混じっている。

 泥沼化したウクライナ戦争の大ウソは「ゼレンスキー大統領は頑張っている」という〝称賛の声〟の数々である。

 確かに、ロシアのプーチン大統領は(米国製の)近代兵器を甘く見て、「戦車で突入すればウクライナは降伏する」と勘違いしたのだろう。悪戦苦闘している。米国やNATO諸国が武器供与を続ければ、ロシア軍がウクライナ全土を支配することは多分できないだろう。

 しかし、である。

 米国はロシア軍を一掃するだけの「決定的な武器」はウクライナに与えていないという。米国の戦略はロシアを勝たせないこと。だが、ウクライナも勝たせない!ではないか?

 欧州連合(EU)はウクライナの加盟を正式に認めるだろう。ウクライナは軍事的にも、経済的にも「善戦」するだろう。そこで「ゼレンスキー大統領は英雄!」と称賛する向きも多くなる。しかし現実には、ウクライナ兵士は1日に約100人もの死亡情報がある。戦いが1年も続けば、3万人の若者が犠牲になる。

 戦争が長期化する中、兵器産業は空前の好景気。「占領された国土を最後の1メートルまで取り戻す」と宣言するゼレンスキーは結果的に兵器産業を手助けしている。

 ウクライナ戦争は「米国の軍産複合体の独り勝ち」なのだ。国土は疲弊し、毎日のように若者が大量に殺される。ウクライナ国民から見れば、ゼレンスキーは「最悪な指導者」に間違いないのだが......。

 ウクライナ戦争を横目に、日本の政治家の多くが英雄気取りで「北大西洋条約機構(NATO)加盟国」でもないのに、ウクライナ支援も含めた「軍備拡張」を訴えている。当方から見れば、まるで米国兵器産業の「手先」になっているように見える。

 岸田首相主導の「貯蓄から投資へ」キャンペーンも「真っ赤なウソ」を直感する。

 岸田さんが初めて言い出した、と思われているが、実は金融庁が2003年から「一人一人が資産形成を行うこと」を目標に、証券税制を優遇したり「貯蓄から投資へ」組を応援していた。その「投資組」を増やそうとするのが岸田流だ。

 そもそも、日本の給与所得者の平均給与は1997年の467万円をピークに、20年は433万円。34万円も減っている。

 日本人は貧乏になった。

 しかも、である。「投資」がうまくいけば配当を受け取る。その代わりに「元本割れ」というリスクもある。「投資」は一種のギャンブルだ。

 天下党の面々が兵器産業や金融産業の「手先」になっているようで、きわめて不安である。

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