牧太郎の青い空白い雲/869
「小難しいこと」を書くのをお許し願いたい。
政権交代が起きないまま自民党政権が38年続いた政治システムを我々は「1955年体制」と呼んだ。55(昭和30)年当時、世界は米国とソ連の冷戦の真っただ中。自民党は「改憲・保守・安保護持」を標榜(ひょうぼう)。野党は「護憲・革新・反安保」を叫び、何やら「米ソの代理戦争!」という雰囲気だった。
で、今の日本はどうか? 2012年12月26日から7年8カ月続いた安倍政権。そして菅政権、岸田政権......。自民1強の政治システムはまさに「2012年体制」だ。
「55年体制」の時には社会党、民社党、共産党(時には公明党)が「自民独裁」にブレーキをかける役割を果たしていたが、「12年体制」の下で野党はバ〜ラバラ、自民党のやりたい放題である。
森友学園問題、加計(かけ)学園問題、桜を見る会問題、検察官定年延長問題、カジノ汚職、河井夫妻による買収事件......。次々にスキャンダルが起き、首相の刑事責任まで追及される事態になっても「時の権力」は法の支配を歪(ゆが)め、説明責任を放棄して「全く問題ない!」で済ましてしまう。「独裁」だ。
メディアの多くはこのところ「権力」を批判するどころか「ちょうちん報道」のオンパレード。(僕から見れば)北朝鮮と同じだ。
「12年体制」は憲法だって平気で無視する。最も腹が立ったのは......。憲法53条に「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」とある。ところが17年6月22日、野党が召集要求を提出すると、安倍内閣は9月28日に「召集する」と閣議決定。国会は召集されたが、アッと驚く冒頭解散。国会審議は無くなった。
手品である。
常々、権力から懐柔されているんだろう。メディアは「憲法無視」を指摘することもなく「与野党の政治的駆け引き」として報じた。
最近、「体制」はロシアとウクライナの戦争で「悪いのはプーチン!」の世論操作。確かにプーチンは極悪人だが、「これを機に、防衛費を国内総生産(GDP)比2%以上に!」と叫ぶ自民党の言い分も度を超えている。だというのに、多くのメディアが「軍備の爆買い」を容認する構えだ。
長々と「小難しいこと」を書いたが、読者も薄々「法治主義」が崩壊した「12年体制」の存在に気づいているはず。何も言わないのは「仕方ない」と諦めているからだろう。でも、諦めてしまうのは「奴隷根性」じゃないか?
我々が「奴隷根性」から解放されなければ、「12年体制」はさらに強固になる。過激な言い分だが、参院選は「奴隷解放」の戦いだ!