牧太郎の青い空白い雲/864
和歌山県議会は4月20日、カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致について、計画の国への申請を反対22、賛成18で否決した。仁坂吉伸知事に「痛恨の極みだ」と言わしめた4票差。最大会派の自民(27人)が党議拘束をかけずに採決に臨んだためだろう。
「超大物」の二階俊博元幹事長、世耕弘成参院幹事長の地元で、この体たらく。自民党もアチコチで「綻(ほころ)び」が見えてくる。
それ以上に動揺しているのは衆院選で躍進した日本維新の会(以下、維新)ではないだろうか。
横浜市の誘致撤回に続き和歌山県の「頓挫」で、誘致を目指す自治体は大阪府と大阪市、長崎県だ。
「維新」が強力に推す「2025年に開催する万博会場・夢洲(ゆめしま)に誘致する大阪案」(米カジノ大手MGMとオリックスの共同計画)は――。初期投資1兆800億円。2028年開業を予定し、2500人収容の宿泊施設、6000人が利用できる国際会議場など巨大な施設を造る。雇用創出数は約1万5000人。府と市に毎年1100億円のカネが落ちる。
結構な話である。
ハウステンボスの隣接地へ誘致しようと決めた長崎案(オーストリア国営CAIJが計画)は――。九州圏内への経済波及効果が年3200億円。雇用創出効果は3万人前後。最大1万2000人を収容できるMICE(会議・展示場)施設も建設するという、究極の箱モノ。国からの「巨額の補助金」もある。
でも、大風呂敷じゃないか?
コロナ禍で「何千人も集める会議」を行う必要はない。リモート会議でいいじゃないか? なぜ「広い会議場」が必要なのか。2018年に施行されたIR整備法が「カジノ施設は(IR)施設全体の床面積の3%以下に制限する」と決めているからだ。カジノで儲(もう)けるために「広い会議場」が必要なのだ。
今、パチンコ人口は710万人程度。少しだが減っている。果たして、カジノにどのくらい客が集まるのか。「維新」が進めようとする「大阪案」について、関係者の多くが「黒字になったとしてもこれは50年先の話」と漏らす。コロナ禍で国内外の観光需要は不安定。しかも、ウクライナ侵攻の経済制裁での原油価格高騰もある。加えて「悪い円安」が進んでいる。
ANA(全日空)とエアージャパンは、国際線の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)を6月発券分から大幅引き上げする(例えば日本発着の片道あたり、ハワイを除く欧米・中東・オセアニア線は3万7400円)。ロシア領空の飛行禁止措置で迂回(うかい)ルートを取ったので運賃は上がるだろう。カジノの「お得意さん」と期待する韓国の「反日の空気」もリスクだ。
今、日本でカジノを開いたら「廃墟(はいきょ)」になる。「維新」の面々が、これらリスクを隠し「大阪はカジノで再生する」と主張すれば、コレは欺瞞(ぎまん)だ!