牧太郎の青い空白い雲/863
東京外国為替市場の円相場は一時、1㌦129円台(4月20日現在)。約20年ぶりの円安だが、市場関係者は1㌦150円台を睨(にら)んでいるらしい。不安だ。電気、ガス、ガソリン、もろもろの食料品......。値上げラッシュの最中(さなか)、さらに「円安」で家計の負担は大きい。
日銀の金融緩和策にも批判の矛先が向けられているが、もし金融緩和策をやめれば、失業率は上昇、経済格差はさらに拡大する。バブル崩壊以上の「日本沈没」の危機を招くだろう。ともかくニッチもサッチもいかないのだ。
40年も前のことだが、「中曽根番」記者だった当方、当時の中曽根康弘内閣が「米国発の円安」に苦しんでいたことを覚えている。
1970年代後半、いわゆる「カーターショック」でドル大暴落。1㌦200円を割り込んだ。間違いなく円高である。
そこでレーガン大統領は、インフレ対策のため金融引き締めに動き、FRB(米連邦準備制度理事会)は次々に高金利政策を強行。結果、一転してドル高が進んだ。1980年代前半には1㌦250円から260円。にもかかわらず、レーガン政権は為替介入に動かず、勢いづいた相場は止まらなくなってしまった。
当方の記憶では「日米円ドル委員会」という組織ができ、日本が円安阻止のために外貨建て債券を発行することで合意した。通称「中曽根ボンド」である。外貨資金を調達することで「円防衛体制」を強化するしかない!と思ったのだ。
それから40年たった今。今回の流れも「米金利上昇→米ドル高→円安」である。バイデン政権は、中間選挙を控え、国民の期待の強いインフレ対策を優先するだろう。となれば、半永久的に円安が続く。
日本が独自に円安を阻止するには「中曽根ボンド」ならぬ、「岸田ボンド」を発行して円を防衛するしかないのか? はっきり言えば、ウクライナ侵攻の余波で、日本は(戦争当事国の)ロシア以上に「自国通貨安」防衛に右往左往している。加えて、中国、韓国の不動産バブルの終焉(しゅうえん)で、日本でも「忍び寄る不動産不況」が予測されている。金融引き締めに転換すれば、高金利の不況がやって来るだろう。
岸田さんは「原油高対策」「資源・食料の安定供給」「中小企業の資金繰り支援」「生活困窮者の支援」の4本柱とする緊急対策を考えているようだが、これだけで良いのか?
この際、はっきり言う! 消費税を1年間だけでもゼロにすべきだ! 少なくとも電気、ガスは消費税ゼロでなければならない。
「選挙前に一律10万円給付」を訴える向きもあるようだが、「究極の岸田流」は消費税ゼロ!と信じているのだが......。