牧太郎の青い空白い雲/860
ウクライナ侵攻はあり得ない!と断言していた「専門家」たちがここ1カ月、「プーチンは狂っている」と口を揃(そろ)えて話している。
己の「見通しの甘さ」を棚に上げ、今度は「プーチン発狂説」。コロナ禍騒動でも同じだが、世にいう「専門家」は(時々だが)アテにならない。
専門家の多くが「賢い!」と論評していたプーチンは(外交に素人な当方に取っては)「異常な大統領」にしか見えなかった。
2016年12月、安倍首相(当時)の地元、山口県長門市で行われた「日露首脳会談」。プーチンは約2時間40分も遅刻した。
ドイツのメルケル首相(当時)を4時間待たせた〝実績〟もあるらしいが、異常である。「大物」ぶって見せる詐欺師の手口に似てはいるものの、相手国のトップを何時間も待たせるのは「狂気の始まり」である。にもかかわらず、安倍さんは、その「非礼」に目をつぶり、平和条約締結に向けた共同経済活動で合意した。その時も、プーチンは「北方領土」の具体的な進展には触れなかった。
果たして、大ロシアを目指す大統領が本当に北方領土を返すのか? 外務官僚も「騙(だま)されているのではないか?」と心配したが、安倍さんは「プーチンはやるから」の一点張りだった。まるで、プーチンに土下座しているような安倍外交。結果的にカネだけ盗(と)られた「大失敗」だった。
その安倍さんが3月19日、近畿大学の卒業式にサプライズ講演。「大切なことは、失敗から立ち上がること。失敗から学べれば、もっと素晴らしい」と挨拶(あいさつ)した。ご立派である。
そういえば、ウクライナ侵攻が始まると、安倍さんは過去の「大失敗」を隠し、一転して反プーチン。彼に侵攻されないために「憲法改正が必要だ!」と言い出した。
例の「核共有」である。
「NATO(北大西洋条約機構)は核シェアリングという手法で核の脅威に対して抑止力を持っている。もしウクライナが(NATO)に入ることができていれば、このような形にはなっていなかっただろう」
要するに、アメリカから借り受けて日本国内に戦術核を配備しよう! そのためには憲法改正が必要だ!という「素晴らしい?論法」である。
ロシアの侵攻を見ていると、軍備増強が必要!と思う向きも多いだろう。しかし、憲法9条とウクライナ侵攻はまったく無関係だ。憲法は侵略戦争を禁止している。が、自衛権はある。ウクライナ国内で自国軍がロシア軍に抵抗しているのは自衛権の行使。仮に日本が侵略を受けたとしても、ウクライナ軍と同様の抵抗を行うことを憲法9条はなんら制限していない。
つまり、安倍さんはウクライナ侵攻に「便乗」して「憲法改正」を旗印にする? 多分、「保守派の王様」になりたいのだろう。
どこか、プーチンに似ているじゃないか(笑)。