サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2022年4月10日号
買収で34人も起訴されたのに「安倍晋三」に〝不起訴特権〟?
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牧太郎の青い空白い雲/859

 国会議員には憲法で認められた三つの特権がある。

 国庫から相当額の歳費を受ける「歳費特権」(憲法第49条)、国会の会期中逮捕されない不逮捕特権(憲法第50条)、議院で行った演説、討論または表決について、院外で責任を問われない「免責特権」(憲法第51条)。

 堅苦しいことを言い出したのは、衆院が4月から、赤坂議員宿舎の家賃を月額約1万3000円(9・7%)引き下げて、約12万5000円とする!と宣言したからだ。

 コロナ禍が続き、この春、電気代、ガソリン代、多くの食料品が軒並み値上げ。庶民は苦しんでいるのに......これは「悪(あ)しき議員特権」ではあるまいか?

 都心の一等地にある赤坂宿舎は2007年4月に使用開始。3LDK(82平方㍍)で、民間なら月50万〜60万円と言われている豪華マンションだ。使用開始から15年が経過すると値下げする〝決まり〟!と衆院は涼しい顔だが、この「インチキ特権割り増し」は当方から見れば憲法違反だ。

 腹が立つ。

 もっと理解できないのは、河井克行元法務大臣と妻案里元参院議員が引き起こした大規模な買収事件の顚末(てんまつ)である。広島地方検察庁は、現金を受け取ったとされながら不起訴になった広島の地元議員を検察審査会の「起訴すべき」との議決に沿い(体調不良の1人を除く)34人を公職選挙法違反の罪で〝一転〟して起訴した。

 地検が当初、議員ら全員を不起訴にしたのは、検察と議員らとの間で、事実上「司法取引」が行われたからだろう。一転起訴は当然。法はできる限り「平等」でなければならない。

 だというのに、この大規模な買収の陰にいる安倍晋三・自民党総裁(当時)に対しては、事情聴取さえ無かった。

 河井夫婦は現金を配る時、「これ、総理から」「安倍さんから」と話している。

 自民党本部から、買収資金に使われた(と思われる)1億5000万円の選挙資金が河井陣営に渡された。通常の10倍である。

 当時の幹事長、二階俊博さんは2021年5月24日「1億5000万円には組織上、総裁、幹事長に責任がある」とまで言っている。

 カネを貰(もら)った地方議員が起訴されるのであれば、安倍晋三・総裁(首相)は買収事件の共犯として起訴されるべきだ。

 聞くところによれば、広島地検の幹部は捜査の過程で「官邸が圧力をかけて、買収事件の捜査をやめさせようとしている」と漏らしたらしい。

「安倍内閣の犯罪」を隠そうとした!としか思えない。

 ひょっとすると、日本には「大物の不起訴特権」があるのかしら(笑)。

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