牧太郎の青い空白い雲/854
一人だけが金メダルに輝き、大多数が「敗北」に涙を流す北京五輪。
テレビが大袈裟(おおげさ)に演出する「安手の感動」に酔いしれるのは良いけど......反面「やるせない思い」を何度もさせられた。
そんな悲喜劇の中で、一番気の毒だったのは19歳のフィギュアスケート女子中国代表、朱易さんではあるまいか?
2月6日に行われた団体戦女子ショートプログラム。彼女、運悪く転倒してしまった。
その翌日のフリーでも、ジャンプに失敗。転倒が続く。演技後、両手で顔を覆って涙を流した。
その結果、中国は5位だった。
ネットでは「朱易はまた転んでまた泣いた」「五輪最大の後悔」と批判的な書き込みばかり。「恥知らず!」というのもあった。
この厳し過ぎる反応には「理由」があった。朱さんは米国生まれ。2018年に国籍を変更。オリンピックを目指したが、中国語も話せない。
実は、当初、美女!と人気だった陳虹伊さんが「北京五輪代表」の最右翼だったのだが、なぜか、中国籍になったばかりの朱さんが選ばれた。
何故? 答えは簡単だった。
朱さんの父親が米・ハーバード大学を出た高名な科学者で、人工知能分野で大成功を収めていることから、選手選考に親の七光り? と人々は疑った。
「親の光は七とこ照らす」ということわざがある。
「七とこ」の「とこ」は「場所」。仏教で、人間は輪廻転生(りんねてんしょう)。天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道の「六道」を生まれ代わる。その六道に「仏界」を含めた「七とこ(全世界)」を「親の光」が照らす!というのだ。
朱さんは忖度(そんたく)出場?
ともかく、親のチカラで(不正に?)五輪選手になった。その結果、「大恥」をかいた!と北京市民は判断した。
でも「コネ入社」の類いはどこにでも転がっているんじゃないか?
当方の知る限りでは、大手広告代理店「○通」の入社試験では「コネ」が最優先される。有力政治家、芸能人、スポーツ選手、それに大手スポンサー企業の重役らと「縁続き」でないと、まず合格しない!と断言する友人も多い。
でも......「コネ入社組」はいつもハラハラしている。
所属組織が何か失敗すると「コネ入社組」の責任になりそうで。
しかも、企業によっては「コネ入社組」は始めから「重要な部署(出世街道)」から外されることもあるらしい。
北京五輪は悲喜交々(こもごも)。
そんな中で、最も勉強になったのは「親の七光り」の限界?
コネ入社は時代遅れ!ということだ。