サンデー毎日

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2022年3月 6日号
「親の七光り」選手が転倒して教えた「コネ入社」は時代遅れ?
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牧太郎の青い空白い雲/854

 一人だけが金メダルに輝き、大多数が「敗北」に涙を流す北京五輪。

 テレビが大袈裟(おおげさ)に演出する「安手の感動」に酔いしれるのは良いけど......反面「やるせない思い」を何度もさせられた。

 そんな悲喜劇の中で、一番気の毒だったのは19歳のフィギュアスケート女子中国代表、朱易さんではあるまいか?

 2月6日に行われた団体戦女子ショートプログラム。彼女、運悪く転倒してしまった。

 その翌日のフリーでも、ジャンプに失敗。転倒が続く。演技後、両手で顔を覆って涙を流した。

 その結果、中国は5位だった。

 ネットでは「朱易はまた転んでまた泣いた」「五輪最大の後悔」と批判的な書き込みばかり。「恥知らず!」というのもあった。

 この厳し過ぎる反応には「理由」があった。朱さんは米国生まれ。2018年に国籍を変更。オリンピックを目指したが、中国語も話せない。

 実は、当初、美女!と人気だった陳虹伊さんが「北京五輪代表」の最右翼だったのだが、なぜか、中国籍になったばかりの朱さんが選ばれた。

 何故? 答えは簡単だった。

 朱さんの父親が米・ハーバード大学を出た高名な科学者で、人工知能分野で大成功を収めていることから、選手選考に親の七光り? と人々は疑った。

「親の光は七とこ照らす」ということわざがある。

「七とこ」の「とこ」は「場所」。仏教で、人間は輪廻転生(りんねてんしょう)。天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道の「六道」を生まれ代わる。その六道に「仏界」を含めた「七とこ(全世界)」を「親の光」が照らす!というのだ。

 朱さんは忖度(そんたく)出場?

 ともかく、親のチカラで(不正に?)五輪選手になった。その結果、「大恥」をかいた!と北京市民は判断した。

 でも「コネ入社」の類いはどこにでも転がっているんじゃないか?

 当方の知る限りでは、大手広告代理店「○通」の入社試験では「コネ」が最優先される。有力政治家、芸能人、スポーツ選手、それに大手スポンサー企業の重役らと「縁続き」でないと、まず合格しない!と断言する友人も多い。

 でも......「コネ入社組」はいつもハラハラしている。

 所属組織が何か失敗すると「コネ入社組」の責任になりそうで。

 しかも、企業によっては「コネ入社組」は始めから「重要な部署(出世街道)」から外されることもあるらしい。

 北京五輪は悲喜交々(こもごも)。

 そんな中で、最も勉強になったのは「親の七光り」の限界?

 コネ入社は時代遅れ!ということだ。

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