サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2022年2月13日号
〝本物の記者〟なら安倍さんに黒歴史「新聞記者」を見たか?と聞け
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牧太郎の青い空白い雲/851

 誰だって「黒歴史」を持っている。

 今となっては恥ずかしい! できれば、なかったことにしたい「過去」。政治家は「黒歴史」とは言わず「墓場まで持っていく!」と言う。「死んでも言いません!」と約束するのが(ヤクザのような)政治の世界の「掟(おきて)」である。

 1月20日の夕方、大規模買収事件で有罪が確定した河井案里元参院議員の親族から「案里が『さようなら』と言っている」という110番通報があった。警察官が駆け付けると、彼女は意識がもうろう。どうやら、睡眠薬を20錠ほど服用したらしく病院に搬送された。

 命に別条はなかったが、夫の元法相が公選法違反で懲役3年の実刑が確定。服役中だから「死にたい!」と思うのも理解できる。しかし、である。思い起こすのが「自民党本部から河井夫婦の陣営に配られた1億5000万円」である。

 誰が巨額のカネを流したのか?

 自民党の二階元幹事長は「私は関与していない。当時の選対委員長が広島を担当」と発言。当時の安倍晋三首相と(選対委員長だった)甘利明さんの「仕業」らしいが、もし、彼女が「1億5000万円の黒歴史」を言い出したら......と関係者はビクビクしている。

 実は、それより、安倍元首相にとって気になるのは、例の動画配信サービス「ネットフリックス」のオリジナルドラマ「新聞記者」のヒットである。

 森友学園を思わせる「栄新学園」の土地取得を巡る公文書改ざん問題がテーマ。「安倍」の名前こそないけれど「総理のご意向で〝お友達〟に常識を逸脱した便宜が図られた裏側」を徹底的に描いている。

 例の「私や妻が関係していたということになれば、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」という名文句も登場する。

 真っ向から時の政府を批判するドラマは地上波のテレビでは皆無。国の認可で放送事業を行うテレビ局が「お上に不都合な作品」を作れば「免許を取り消す!」と脅される。しかし「ネットフリックス」は違う。米国資本。「有料会員への配信サービス」でCMが入らないから、スポンサーの「横槍(よこやり)」もない。政治が介入する余地はない。だから、平気で「政権の黒歴史」を暴く。

 真実を追求する「新聞記者」を演ずる米倉涼子さんは大手プロを独立して「自由な立場」で参加している。

 現実の大新聞、テレビは殆(ほとん)ど「政権」にピッタリ?で頼りないが、せめて、安倍さんに記者会見で「『新聞記者』を見たか? アレは真実か?」と聞いてくれ!

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