サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2022年1月23日号
アメリカ様に「PCR検査しないなら国交断絶」とそっと言え!
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牧太郎の青い空白い雲/848

「よく来たなアメリカ様にそっと言ひ」という川柳をご存じだろうか?

 嘉永6(1853)年6月3日、フィルモア米大統領の命を受けたペリー提督が4隻の黒船を率いて、浦賀沖に現れ、日本中が大混乱。江戸っ子はその模様を、

「泰平の眠りを覚ます上喜撰(じょうきせん)(蒸気船)たった四杯で夜も寝られず」とか「陣羽織 異国から来て洗い張り ほどいてみたら裏が(浦賀)大変」とか、皮肉っぽく詠(うた)った。

 日本人が初めて見た蒸気船の凄(すご)さ。人々は、当時、最高級のお茶だった「上喜撰」に引っかけて「高いお茶を飲んでいるように興奮して寝られない!」と笑った。

 そんな落首、狂歌、川柳の類いで、最も「複雑な思い」を表したのが「アメリカ様にそっと言ひ」だろう。

 黒船来航で、幕府は右往左往。日光東照宮に使いを立て、白銀100枚を出し徳川家康公に「何とぞ幕府をお守りください」と祈願しただけ。

『毎日新聞』の前身『東京日日新聞』の社長だった福地源一郎は『幕府衰亡論』の中で「海岸警備を諸大名に命じたが、二百有余年の泰平に馴(な)れた悲しさ、武具兵具とて満足になく、彼らは、慌てて商人に集めさせ、屋敷出入りの口入れ屋に足軽従卒の斡旋(あっせん)を依頼して、とりあえず、頭数だけ揃(そろ)えた」と書いている。

 つまり、この騒ぎで、武具師、馬具師が大儲(もう)け。ペリー提督様に「よく来たな!」と言いたい気分だった。

 翌年、ペリー提督は再び来航。幕府は武蔵国久良岐郡横浜村字駒形(今の神奈川県庁辺り)に応接所を設置、約1カ月にわたる協議の末「日本國米利堅合衆國和親條約」を結ぶ。この第9条で、幕府は米国に「片務的最恵国待遇」を与える!と約束した。

 日米両国の「付き合い」はこうしてアメリカ主導?でスタートした。

 日本は第二次世界大戦で敗戦。今でも沖縄の一部は事実上、米軍支配下にある。

 そんな中で起こった新型コロナ騒動。米海兵隊基地「キャンプ・ハンセン」で発生した巨大クラスターで、基地外でオミクロン株感染が広がっている。

 だというのに、米兵はマスクなしで外出。酒を飲む。キャンプ・ハンセン所属の海兵隊員が酒気帯び運転で立て続けに2人も逮捕される始末だ。

 しかも、信じられないことだが、昨年9月以降、米海兵隊の部隊が出入国してもPCR検査を行っていない。同じアメリカの同盟国・韓国では米軍関係者の感染経路や健康状態を開示し、出入国時にはPCR検査を実施しているのに......。

 沖縄は米軍のお陰で経済的利益を受け、両国には(アメリカ優位の)地位協定がある。だから、弱腰になるのは分かる。それにしても、日本人の命に関わる......せめて「PCR検査をしないなら国交断絶だ!」とそっと言え!

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