サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2022年1月 2日号
今年のクリスマス。「流離(さすら)うアベノマスク」の悲運に泣いた!
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牧太郎の青い空白い雲/846

 コロナ騒動の2021年。やっとクリスマスの季節を迎えた。イエス・キリストの誕生日、12月25日に「コロナよ、さようなら!」と祈るつもりだが、キリストは本当に12月25日に生まれたのか?

 聖書には「そのころ、全世界の住民に、登録をせよ!という勅令が皇帝アウグストから出た。(略)みな、登録のために、それぞれ自分の町に向かって行った」(ルカの福音書2章1、3節)とある。

 だから身重のマリアも夫のヨセフとともに、ヨセフの出身地であるベツレヘムまで 約150㌔の旅をしたのは事実だが、人々は真冬に「移動」することはない。

 イエス誕生の情報を初めて知った「羊飼い」たちの生活も「冬期出産」を否定している。「この土地に、羊飼いたちが、野宿で夜番をしながら羊の群れを見守っていた」(ルカの福音書2章8節)と書かれているのだが、羊飼いたちが野営できる季節は4~10月。イエス誕生日は不明。少なくとも「真冬」ではない。

 イエスの死後、何百年も経(た)ってから「生誕を祝う日」として12月25日が選ばれた理由は? 多分、ローマでは「冬至の頃」が一年中で最も日が短く、どん底のように暗い。そこから、春に向かって、だんだん日が長くなり、明るくなる。「太陽の復活の日」として、選ばれたのだろう。

 さて、2021年のクリスマス。コロナで失業、アルバイトができず退学、飲食店の倒産は数知れず。夜逃げ、ついには自殺......。「どん底」だろう。

 来年こそは!とは思うのだが......一番、気の毒なのは「アベノマスク」である。

 安倍晋三元首相が2020年4月、マスク不足解消の切り札として「全世帯に2枚配布」されたアベノマスク。「布製だから何度も洗える」「マスク需要に対応できる」という〝売り込み〟で約260億円も注(つ)ぎ込んだが、配り始めると、汚れや虫の混入が相次いで発覚。配布を終えると「小さい」「息苦しい」などクレームばかり。そのうちに、不織布マスクの供給も少しずつ増え、アベノマスクは多くの家庭で〝眠る〟ことになった。

 20年8月、介護施設や障害者施設、妊婦向けに「アベノマスク」を調達し、希望を受け付けたが、申し込みは激減。何と約8000万枚以上が引き取られず、未(いま)だに倉庫で山積みにされている。その保管費用は何と約6億円。

 昭和の歌謡曲の文句ではないが「どうすりゃいいの、思案橋」である。

 今回は年末年始合併号。「アベノマスク」のような寂しい運命に巻き込まれることのないように。読者の皆さん、よいお年を!

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