サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2021年12月19日号
インボイス論争で「維新」VS.「れいわ」の戦いが始まった!
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牧太郎の青い空白い雲/844

 ごく小さな事業をしている関係で、税理士から「インボイス制度を勉強してください」と言われた。

 インボイス(適格請求書)制度は「消費税のナンバーカード」のようなもの。2023年3月31日までに「登録申請書」を出す必要があるらしい。

 なぜ、こんなものが必要なのか? その理由は複雑な「消費税の仕組み」にあるらしい。

 ご存じと思うが、消費税は単純に売り上げに10%を掛けるのではない。売上高の10%から、仕入れなどにかかった10%の消費税分を差し引いて、税務署に納める。その「仕組み」が複雑にして、かなり曖昧?な日本独特のもので「帳簿方式」と呼ばれているらしい。

 消費税の税率が高いヨーロッパ諸国で実施している付加価値税の控除方式は「インボイス方式」と呼ばれ、税務署から付与された付加価値税登録番号を記載した請求書・領収書によって、仕入れ税額控除を行う仕組み。政府はこのインボイス方式に変えることで「厳密な納税」を目指す。

 そこで、問題になっているのが「免税」である。

 現状では、特定期間の課税売上高が1000万円以下......などの条件の時に、消費税の納税が免除される。

 長引くコロナ禍。売り上げが1000万円以下になった事業者が「死にたいぐらい辛(つら)いが、消費税の納税義務がなくなるだけでも助かる」と話しているが、インボイス制度が始まれば、この「免税」の仕組みも変わる。

 事実上、インボイス制度は増税? 当然、国会の争点になる筈(はず)だが、メディアも含め、世間はほとんど「無関心」だ。

 ただ、衆院選の最中、「維新」の生みの親・元大阪府知事の橋下徹さんがテレビ番組で、れいわ新選組・山本太郎代表に対し「インボイス反対は詐欺師的な主張」と迫る一幕があった。

「いま実質(売り上げ)1000万の方々は免税、となっていますけれど、よく考えたら消費者、サラリーマンの方は源泉徴収で一銭たりとも税金をもらすことは許されない、サラリーマンの方々が事業者に預けている消費税をインボイス制度で納税するのは当たり前じゃないですか」と主張した橋下さん。

 山本代表は「間違った誘導はやめていただきたいんですよ、橋下さん。年の売り上げが1000万円未満の小規模事業者ですよ、零細企業ですよ。フリーランスの人々ですよ、一人親方の人ですよ。要は500万事業者の方々が自分たちの生活を圧迫しながら人生を生きている中で、そこに消費税まで乗せたらどうなりますか......」。

 インボイス騒動で、衆院選で躍進した「維新」vs.「れいわ新選組」の戦いが始まっている。

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