牧太郎の青い空白い雲/838
「今日の仕事は楽しみですか。」というメッセージ広告が東京・JR品川駅の自由通路に並んだ。
実際に見たわけではないので、よく分からないが、たまたま通り掛かった知人によると「長さ250メートルぐらいの自由通路の左右に70インチの大型ディスプレーが44個も並んでいた」というから〝大掛かり〟なものだったらしい。
ところが、その翌日、44個の広告が一斉に姿を消した。
知人の話ではネット上で「働く人の神経を逆なでしている」という非難が殺到。翌日に取りやめになったらしい。
このメッセージ広告、人材育成や新規事業開発を手掛ける企業が出したものらしい。やめることもないのに。いまはやりの「同調圧力」を感じてならない。
最近、日本人は不寛容主義。笑い飛ばし許す「技」を忘れている。
例年話題になる「都道府県魅力度ランキング」。今年のこれに腹が立った。
小さい頃、戦争で疎開した「埼玉県」(女房の出身県でもある)が何と45位。冗談じゃない。川口、大宮など「住みたい街」が幾つもあるのに......腹が立った。
確かに「ダサい」と「埼玉県」を掛け合わせ「ダ埼玉」と揶揄(やゆ)されていたから、いまだに「野暮(やぼ)ったい」「垢(あか)抜けない」と誤解されているのだろう。
まあ、笑い飛ばすしかない。
ところが、である。埼玉県より上位にランクされた44位の群馬県の山本一太知事が「根拠の不明確なランキング」と批判。「法的措置も検討する!」と言い出した。
この調査は09年から毎年実施されているが、ネットで3万5000人ぐらいを対象にしたもの。失礼だが、新聞社の世論調査と同じように「アテ」にならない面もある。
しかし、そう窮屈に考えなくてもいいじゃないか。参考資料の一つ! と笑い飛ばせばいいじゃないか?「法的措置を検討」なんて......バカバカしい。
貧乏でも、病でも、笑いのめして生きて行く。東京下町育ちの母は「笑えないことを笑うのが江戸っ子だよ」と教えてくれた。
江戸落語では「病」を「引き受ける」と表現する。感染しても文句は言わない。
ネット時代で「情報」が共有されるようになった。結構なことだが、それをキッカケに、多くの人が「他人」を批判するようになった。
でも、それで人々は幸せになったのか?
たまには「笑い飛ばして」もいいじゃないか?