サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2021年10月24日号
安倍も岸田も福田も...「お坊ちゃま」は民主主義より強い!
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牧太郎の青い空白い雲/836

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」で知られる福澤諭吉には、もう一つ「隠れた名文句」が残されている。

「門閥制度は親の敵でございます」

 九州の中津藩の下級武士の子として育った福澤。父は地元で有名な漢学者だったが、身分制度のため才能を生かすことができず、無念の死を遂げた。

 幕末から維新の時代、家柄のよい家が互いに血縁関係を結んで、次々に出世する。福澤にとって、門閥制度は親の敵! 言い換えれば、福澤流の民主主義は門閥制度との闘いだった。

 彼の教えは自由民主党にも引き継がれ、創成期、この政党には、戦前からの職業政治家(旧党人派)、キャリア官僚組、旧帝国軍人、叩(たた)き上げの土建屋、新興宗教の指導者、それに学者、新聞記者......あらゆる階層から野心を持つ人物が議員になれた。

 それがどうだろう?

 今回の自民党総裁選。4人の候補のうち、岸田、河野、野田の3人が世襲議員。岸田圧勝の筋書き?を描いたのは安倍、麻生の2人の首相。岸田を応援したのが(岸田政権の党幹事長になった)甘利。河野を応援したのが石破、小泉の「小石河連合」......その顔ぶれは全て世襲議員ばかりだ。

 要するに「お坊ちゃま」だけの選挙だったのだ。

 お坊ちゃまが信頼できない原因は「過度の自己愛」にある。

 例えば「河野太郎でなかったら、(ワクチンが)ここまでこなかっただろう」なんて臆面もなく言い放つ。自惚(うぬぼ)れも、顔だけにしてくれ! ここまでくれば「赤ちゃん」だ。

 そんな「赤ちゃん」のために、父、洋平さんが「議員票の上積み」を頼みに参院竹下派のドン・青木幹雄さんの事務所に現れたりして......「お坊ちゃん育ち」は独り立ちできない。

 岸田内閣の若手抜擢(ばってき)人事!と評判の福田達夫総務会長も第67代首相の赳夫(たけお)を祖父に、第91代首相の康夫を父に持つ「札付きのお坊ちゃま」。

 ある事情通に教えてもらったことだが、地元の群馬・高崎で行われた、ある業界のパーティーで挨拶(あいさつ)を始めた3代目、「今日は何という日かご存じですか? 親父の誕生日なんです。東京でお祝いが用意されているので、中座します」と話し、参加者は啞然(あぜん)とした。

 それにしても自民党議員の約3分の1は世襲議員。

 日本人は「ブランド好きだから」という分析もあるけど「お坊ちゃまの星・小泉進次郎」などは4代目。

 福澤諭吉には申し訳ないが「門閥お坊ちゃま主義」は民主主義より強いんだ。

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