サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2021年9月26日号
暴力団「工藤会」の親分死刑判決と自民総裁選の関係?
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牧太郎の青い空白い雲/832

 暴力団「工藤会」による市民を標的にした殺傷事件の数々。福岡地裁は「直接証拠なし」でもトップに死刑判決を下した。

「緻密に間接証拠を積み上げれば上位者の指揮命令を立証できる」との判断だが、それなら「例の桜の事件」はどうなんだ? 

「桜の事件」とは、安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭の費用を安倍サイドが大量に補塡(ほてん)した事件。明らかな「有権者に対する買収行為」だ。

 ところが、東京地検特捜部は「事務所(秘書)がやったことで、親分の安倍さんに罪はない」と判断。昨年12月、元公設第1秘書のみを政治資金規正法違反(不記載)で略式起訴。安倍さんの規正法違反と公職選挙法違反(寄付の禁止)容疑では「不起訴」にした。

 可笑(おか)しいじゃないか!

 子分は有罪。親分は無罪判決?首相だから無罪、ヤクザの親分だったら死刑? 

 首相当時は国会で「補塡はしていない」などの虚偽答弁を118回も繰り返している。

 「噓(うそ)八百の政治家」を許していいのか?

 これに(遅すぎたが)気づいたのが岸田文雄元外相である。総裁選に出馬表明して以来、〝政治とカネの透明化〟を掲げ、買収事件で逮捕された河井夫妻に渡った党のカネ1億5000万円についても解明すべきだ!と訴えた。

 岸田さんがどこまで〝真相解明〟に本気なのか分からないが「優柔不断」と言われ続けた岸田さん、今度ばかりは本気なのだろう。安倍政権の8年弱、岸田さんはひたすら安倍さんに忠誠を尽くし、禅譲を期待したが、結局、前回の総裁選ではハシゴを外された。

 今回は違う。だから安倍さんは「岸田を総理総裁にしたら俺がやられる」と考えている。

 しかも、菅首相の人気は最悪。このままでは「岸田首相」の可能性大。そこで安倍・麻生連合、「岸田」を勝たせないために、候補者が複数立つように「菅降ろし」を画策したのではあるまいか?

 追い詰められた「不人気の菅さん」が総裁選前に衆院解散し、総選挙の与党勝利をもって党総裁選を乗り切る「9月中旬解散」を考えた時、安倍さんは電話で「総裁選はしっかりやるべきだ」と注文した。

 最後の「生き残るための自民党役員人事」でも麻生太郎副総理兼財務相に「麻生派の河野太郎行政改革担当相を党の要職に起用したい」と相談すると「おまえと一緒に、河野の将来まで沈めるわけにいかねえだろ」と一蹴された。菅さんは退陣するしかなかった。

 当方には、そんな筋書きが見えてくるのだが......。

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