サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2021年9月19日号
10月1日「たばこ増税」で東京五輪の赤字を埋めたりして?
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牧太郎の青い空白い雲/831

 小さな会社を経営しているので、8月31日は「苦しみの納税日」。法人税、消費税、都民・事業税。個人としても市県民税、事業税。もう一つの「苦難の納税日・3月31日」には固定資産税が加わる。

「ともかく税金の種類が多すぎるんだ」と友人に嘆いたら「俺なんて、たばこを吸っているだけで毎日、税金を払っているんだ。俺の方がお前より余計払っているかもしれないぞ!」と冗談を言う。

 たばこを吸うと幾ら税金を払うのか? 調べてみた。

 例えば、1箱540円のたばこを買うと国たばこ税126・04円、地方たばこ税142・44円、たばこ特別税16・40円。

 それに消費税が49・09円掛かるから、一箱の税金は総額で333・97円。何と商品価格の61・8%が税金なのだ。

 友人は「1日2箱」のペースだから、333・97円×2箱×365日=24万3798円10銭。確かにバカにならない。

 しかも、である。2000年代に入ってから、03年、06年、10年、18年、20年と5回も「増税」断行。今年10月1日は6度目の値上げで、人気のセブンスターが現行の560円から600円になる。

 コロナ不況の昨今。なぜ、愛煙家だけがイジメられるのか?

 政府(厚生労働省)は「国民の健康を守るため、たばこの消費を抑制するため」と主張する。増税すれば吸う人間が減る。だから「国民の健康を守る増税」だというのだ。

 本当だろうか?

 1年間に、たばこの税収は約2兆円。東京五輪・パラリンピックの開催経費が1兆6440億円だから、その規模の大きさが分かるだろう。で、この約2兆円は何に使われているのか?

 国たばこ税と地方たばこ税は一般財源(一般会計)に組み込まれる。約1248億円の「たばこ特別税」は何故(なぜ)か、かつての国鉄債務の返済に充てられている。

 たばこ税が国民の健康のため使われている「証拠」はまるでない。多分、東京五輪の赤字(2兆円?)をカバーするのだろう。

 個人的なことで恐縮だが、当方、30年前、47歳で禁煙した。脳出血で倒れ「日本たばこ産業株式会社東京専売病院」(今の国際医療福祉大学三田病院)に運ばれた。当時、入院患者専用の喫煙室まで用意されていた「たばこ最優先」の病院だったが、ある医師が小さな声で「たばこはやめましょう」と言ってくれた。正直なお医者さんだった。

 度重なる「たばこ増税」で、失政のツケを払わされる愛煙家の皆さん、10月1日を機に、たばこにサヨナラしたらどうだろう?

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