牧太郎の青い空白い雲/830
何かにつけて「為念」と書く人がいる。
漢文だから「為」と「念」の間に「レ点」(返り点)を入れる。「レ点」の次の一文字を先に読んで「念の為」。でも、この人は「タメネン」と読む。
で、その「為念」の意味は......「一応」とか「確認の為」とか、「万が一に備えて」という意味だろう。
新聞、テレビはほとんど取り上げなかったが、この「丁寧すぎる言葉」が話題になった。
8月のある日、加藤勝信官房長官が会見で、杉田和博官房副長官が体調不良で閣議を欠席したことに触れ「新型コロナのPCR検査は陰性だったが、詳しく調べるため、検査入院した」と説明したのだ。「具体的な症状については差し控える。万全の体調で復帰してほしい」
本当のことは言わないよ!という〝模範的な受け答え〟。普通なら問題にならなかったが、コレが多くの人の怒りを買ってしまった。
PCR検査が陽性であっても、肺炎を起こしていても、政府は「自宅療養が原則」。多くの患者が入院できず、自宅で死亡しているのに「陰性」の官房副長官はすんなり入院した。
ネット上は大荒れ。「何で簡単に入院できるんですか? また上級国民ってやつですか」「本当に入院しなきゃいけない人がたくさんいるのに」と怒りが爆発した。
そう言えば、今年1月、自民党の石原伸晃元幹事長がコロナで即入院。この時も「上級国民だけが!」と話題になったが今回は「念の為入院」である。
感染の急拡大で病床が不足。助かる命も救えない。自宅療養者はこの時点で10万人を超えた。
お役所は「自宅療養の感染者とは少なくとも1日1回は健康観察のため連絡を取る」と言っているが、現実は「連絡」なんて噓(うそ)八百。知り合いの「独り暮らし」は食料がなく、餓死寸前だ。
この現状を菅内閣の面々は知らないのか? 知っていれば「検査入院」なんて許すはずがない。
横浜市長選で、野党系の無所属新人が菅義偉首相が全面支援した「元国家公安委員長」に18万票の差をつけて当選した。血も涙もない「人でなし政治」に人々は怒っている。
念の為だが、菅内閣の面々は「憲法第25条第2項」をご存じだろうか?
「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と書いてある。
念の為だが、菅政権は憲法違反内閣なのだ!