サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2021年9月 5日号
コロナが葬式文化を変え「ワンデー」で業界は大ピンチ?
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牧太郎の青い空白い雲/829

 東京から、と言うより日本中から「年寄り」がいなくなった。

 例えば、東京下町の繁華街・錦糸町。毎週、筋トレのため、この辺りを歩いているが、演歌専門のレコード店。いつも「年寄り」で賑(にぎ)わっていたが、ここ1年半、いつ行っても閑散としている。「呼び物」の新人歌手のキャンペーンもなくなってしまった。

 最近、再開したJRAの場外馬券場も「年寄り」は疎(まば)ら。ともかく「年寄り」がいなくなった。

 65歳以上のワクチン接種がほぼ終わったから「年寄り」も街に出る!と思っていたのだが......デルタ株が怖いのか? 家族から「出るな!」と言われているのか? 

 総理大臣閣下の「うつろな目」を見せられると、不安全、不安心なのだろう。

 当然「年寄り産業」は苦しんでいる。例のレコード店の売り上げは30〜40%減。昔からある純喫茶、スナック、一杯飲み屋、定食屋もガラガラだ(JRAは「年寄り」がネットで馬券を買うようになったので売り上げアップ!だそうだが)。ともかく「年寄り産業」は大ピンチである。

 葬儀屋さんもアップアップだ。

 実は7月末、老人施設に入っていた従姉(戸籍上は姉)が亡くなった。慢性腎不全。86歳だった。

 新型コロナの感染拡大防止のため「看取(みと)り」は辞退したが、葬儀をどうするのか?

 ほとんど「知り合い」もいないが、さて、どうしたものか?

 急いで勉強した。

 新型コロナウイルス感染で命を落とした場合は殆(ほとん)ど「直葬」。つまり遺体を病院から安置所へ、そして火葬場へ搬送する。普通の葬式はできないらしい。

 昨年3月に松山市の葬儀場でクラスターが発生して以来、「事前焼香」「自由焼香」「2部制」などの新しい方法で、参列者が一カ所に集まらないように工夫する。

「3密回避」のためだが、サッサと焼香して出て行ってくれ!ということなのだ。

「通夜なし」というスタイルも多くなった。この業界で「ワンデー」と呼ばれる一日葬では葬儀屋さんは「儲(もう)け」にならないらしい(一般葬では100万円ぐらいかかるが「ワンデー」では、半額になるらしい)。

 そう言えば、この1年半、街で喪服姿を見ていない。究極の「年寄り産業」である葬儀屋さんも大ピンチなのだろう。

 で、勉強の結果、先に火葬を済ませ、通夜、告別式なし、四十九日の法要を済ませ、納骨することにした。

 従姉(ねえ)さんは何と言うか?分からないが、間違いなく、新型コロナが日本の文化を変えている。

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