牧太郎の青い空白い雲/825
毎日新聞の警視庁捜査二課(知能犯)担当の社会部記者だった大昔。上司から「ナイトウブセンが退社するらしい。理由を調べろ!」と言われたことがある。
「ナイトウブセン」と呼ばれたのは空手が得意の政治部記者、内藤武宣(たけのぶ)先輩(『少年少女の空手道:イラスト版』などの著者)。組閣人事をスクープする特ダネ記者の一人だった。
退社の理由は簡単だった。内藤先輩は、第3次佐藤内閣の官房長官に47歳の若さで就任した竹下登さんの次女と結婚。退社して、1972年12月の衆院選で、故郷・福岡1区から立候補する予定だった。
当時、社会部と政治部は仲が悪かった。同じ新聞社にいても政治部は権力寄り。社会部は反権力? そんな中でも、内藤先輩は政治部以外にも親友が多く「空手のブセン」は全社的にも人気者だった。
でも、内藤先輩は衆院選に落選した。もし「竹下」の姓だったら勝てた!という分析もあったが......この選挙で、同じ選挙区で初当選した山崎拓さんは後に自民党幹事長、副総裁に上り詰めたから、運命の分かれ道だった。
選挙後、内藤先輩は竹下登さんの秘書になり、登さんは首相になった。
実は最近、〝競馬もの〟を書くようになって、JRAの幹部になっていた内藤先輩のご長男にお会いした。この時、初めて、人気タレントのDAIGOが彼の弟、つまり「内藤武宣の次男」、つまり「竹下登の孫」であることを知った。
ところで......自民党島根県連は竹下亘(わたる)さんの次期衆院選不出馬、政界引退を発表した。
亘さんは竹下登元首相の異母弟。NHK記者から兄の秘書に転じ、地盤を継ぎ、2000年の総選挙で初当選。現在が7期目。自民党総務会長などの要職を歴任した第3派閥竹下派(52人)のボスである。
〝竹下王国〟を誰が引き継ぐのか?
亘さんの2人の子供さんたちは立候補する気はないらしい。
となるとDAIGOしかいない? ひょっとすると......50年後の「オヤジの復讐戦」なんってことも。
今年はベテラン議員の引退表明ラッシュ。塩崎恭久(やすひさ)元官房長官(70歳・愛媛1区)山口泰明選対委員長(72歳・埼玉10区)らが引退する。
後継はどうやら「世襲」らしい。公募という形を取るが、結局「勝てる候補はセガレ」ということに落ち着く。
日本の政治が三流化している原因は世襲議員だらけ!
「DAIGO」は果たして支持されるだろうか?