サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2021年7月25日号
「五輪ご懸念」の天皇は反日的!皇室は観光資源!と言い放つ奴ら
loading...

牧太郎の青い空白い雲/824

 コロナ対策が行き詰まり仮病?を使って退陣した安倍晋三前首相。このところ、菅内閣の失敗続きを横目に言いたい放題である。

 御用誌『Hanada』で、「(日本人選手のメダル獲得などの)感動を共有することは日本人同士の絆を確かめ合うことになる」「自由と民主主義を奉じる日本がオリンピックを成功させることは歴史的な意味があり、日本にはその責任がある」と強調。五輪開催を批判する人々は反日的!と言い放った。言いたい放題である。

 前回の「青い空白い雲」では、

〈「パンとサーカス」の五輪狂騒曲に騙(だま)され、人々は「考えること」を忘れるのではないか?と天皇陛下はご心配されているのだ〉

 と書いたが、まさに陛下のご推察通り、前首相が「何も考えず五輪に夢中になれ!」と〝命令〟している。

 宮内庁の西村泰彦長官が「国民の間に不安の声がある中で、ご自身が名誉総裁をお務めになるオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大につながらないか、ご懸念されていると拝察しています」と発言したのは、陛下から「代わりに話せ!」と言われたからだろう。覚悟の上だ。

 それなのに菅内閣の面々は「長官本人の見解だ」と突き放す。そればかりか、長官発言は憲法違反!にまで言及する。

 確かに現行憲法の下で、天皇は「国民統合の象徴」(1条)と位置づけられている。全ての国民と精神的に等距離であることが求められ「国政に関する権能を有しない」(4条)とも定められている。

 しかし、コロナという大災害である。国民の生命に関係する。大多数の日本人が「中止・延期」を求めていた。祭典招致国の「象徴」として、開会を宣する役割を担う陛下が国民の気持ちに寄り添い「感染拡大を懸念している」と話されるのは当然ではないのか?

 この「ご懸念」発表は憲法と整合している。

 ともかく、安倍政権以降「天皇は黙っていろ!」である。

 菅首相などは「皇室は観光資源」と考えている。官房長官時代から、インバウンド誘致の目玉に「皇室関連施設」一般公開を据えてきた。皇室のトップ「天皇」はカネを稼げる観光立国のスター扱いなのだ。

 2016年に起こった「生前退位報道」騒ぎを思い出した。あの時、現上皇陛下は国民の応援を背景に「生前退位」を実現した。

 我々は安倍・菅政権の「独裁」と天皇家の「ご覚悟」を見極めようじゃないか!

 安倍・菅の自民党は憲法改正案で「天皇を元首に」と言っているそうだが、陛下のご発言を無視する奴(やつ)らこそ「反日的」ではあるまいか?

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム