サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2021年6月27日号
「電通の、電通による、電通のための東京五輪」だから?
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牧太郎の青い空白い雲/820

「馬鹿の一つ覚え!」とは言わないが、菅義偉首相は何かにつけて「専門家のご意見で」と話す。「責任の所在」を曖昧にするのが得策!と思っているのだろう。

 その結果〝科学的知見〟なるものを振りかざす新型コロナウイルス感染症対策分科会長の尾身茂さんが「国のトップ」のように見える。2人揃(そろ)った記者会見で〝本物の首相〟は鳶(とんび)に油揚げを攫(さら)われたような顔つき。ああ、情けない。

 ところが、混迷の東京五輪・パラリンピックの開催問題で、菅さんはガラッと変わった。尾身さんは「こういうパンデミックでやるのが普通ではない」とまで言ったが、菅さんは完全無視。もちろん、「延期か中止!」という世論には耳を貸さない。

 開会式まで約40日。このまま強行すれば「東京五輪は変異株の祭典」になりかねない。この期に及んで遅すぎる!と言われそうだが、菅さんが隠している「理由」は......「電通」の存在である。

 巨大な広告代理店「電通」はありとあらゆる国家事業の請負人。アイデアも人も、カネも出す。

 東京五輪でも初めから招致活動の中心的な役割で、昨年秋、ロイターは「銀行記録によれば、日本の電通は2013年、東京五輪招致委員会の口座に約6億7000万円を寄付として入金した」と報じた。事実、電通は「開催都市決定への投票権」を持つ一部のIOCメンバーに対するロビー活動を主導してきた。

 ご記憶にあると思うが、JOC会長だった竹田恆和さんが招致に関して「疑惑のカネ」を送った〝疑い〟で退任したが、その工作に電通が深く関わっていたことは五輪関係者の誰もが知っている(IOCは招致活動の公平性と中立性を確保するため、利益相反を防止する行動規約を設けている)。

「請負人」の電通は大いに儲(もう)ける。例えば放映権。アメリカ分はNBC、日本分はNHKと民放連盟が共同で獲得したが、アジア分は電通が入手。22カ国に販売することになっている。

 手弁当の大会ボランティアのお陰で、電通は儲けているのだ。

 まさに「電通の、電通による、電通のための東京五輪」ではあるまいか?

 ところが、その「敵なし」の電通にも新型コロナという禍(わざわい)がやって来た。電通グループの20年12月期決算。収益が前年比10・4%減の9392億円、営業損益は1406億円の赤字。赤字額は過去最大である。

 もし、五輪が中止されれば......関連企業を含め、巨大な電通グループは......。東京五輪は進むも地獄、退くも地獄!なのだ。

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