サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2021年4月18日号
激辛好きの高級官僚を接待するには「大豆肉カレー」が最適?
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牧太郎の青い空白い雲/811

 桜が満開になると、必ず東京は「日本橋・丸善」3階のレストランに行く。窓から「桜のトンネル」が一望、できる。

 注文するのは、もちろんハヤシライス。明治時代、祖父の牧文次郎が番頭を務めていた「洋書の丸善」の創業者・早矢仕有的(はやしゆうてき)は友達が来ると、あり合わせの肉と野菜をゴッタ煮にして、ご飯を添え、振る舞った。

「早矢仕さんのライス」だから「ハヤシライス」。「丸善」では早矢仕有的の誕生日9月8日を「ハヤシの日」と呼んでいる(『丸善百年史』)。

 しかし、この説には異論がある。例えば「早死ライス」説。江戸時代まで、日本人は牛、豚を食べなかった。明治に入って、洋食店が獣肉を使った料理を提供したのだが、街には「獣の肉など食べたら早死にする!」という噂(うわさ)が流れた。

 この説にも「それならカレーライスも〝早死ライス〟じゃなければならない!」という異論がある。

 ともかく、明治は、人々が恐る恐る獣肉を食べる「食文化の革命期」だった。

 あれから約150年。日本人は早死にすることもなく獣肉を食べ続けたのだが......最近、日本人は江戸時代に逆戻りする!という意見が台頭している。

 世界的な人口増加による食糧危機。国連食糧農業機関(FAO)は「2030年以降、牛、豚、鳥といった食肉が不足する」と警告しているのだ。

「大豆肉カレー」をご存じだろうか?

 レトルト食品で知られる「ヤマモリ」(三重県桑名市、1889年創業)が1年前に発売したのが、大豆肉が入ったレトルトキーマカレー「2050年カレー」。2050年の食糧危機?に備えて開発したと言うのだ。

 そういえば「食肉加工」産業も、大豆やこんにゃくなどを原料にする商品を次々に発売している(伊藤ハムの大豆たんぱくを原料にした「まるでお肉!」シリーズなど)。

 ひょっとすると「大豆肉」が食卓のメインになるかもしれない。

 で「大豆肉カレー」って、どんな味?

 表現が難しいが......ガーリックと唐辛子が利き、とても辛い。

 そういえば、高級官僚に対する高額接待が問題になっている昨今。この際、お役人に「大豆肉カレー」を振る舞ったらどうだろう?

「珍しさ」は抜群、もちろん「時代」の先取り。その上、支払いは1000円以下?

 明治時代、カレーライスも、ハヤシライスも(一時)高額で「過剰接待」の類いになったようだが「令和の代替肉カレー」をワイロと疑(うたぐ)る人はまずいないだろう(笑)。

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