元AKB48の小嶋陽菜氏(36)が、事業経営者としての高い手腕を評価されている。8月5日、自身がプロデュースするアパレルブランド「Her lip to」などを運営する「heart relation」の株式の過半を、ストリートブランドを中心に展開する「yutori」(片石貴展社長)に売却し、完全子会社になると発表した。
買収額はおよそ16億円。「yutori」は「heart relation」の株式51%を買い取る。「heart relation」のおよそ8割の株式を保有している筆頭株主の小嶋氏が、どの程度持ち株を放出したかは不明だが、10億円以上の売却益を手にするとみられている。
小嶋氏は、「ブランドスタートから7年目、会社設立5年目となるタイミングで、さらに成長するためのより良い選択肢を増やすことを目的として、同世代の片石くんが創業した株式会社yutoriと協業することになりました」と報告した。
一方、買収側の片石氏は、「こじはるさんとはお互い起業したてのタイミングで共通の知人を通じてお会いし、活躍をずっと見てきた。タイミングがうまくかみ合った」と説明する。
片石氏が経営する「yutori」は現在、約30のブランドを抱える。設立時より「インスタ起業」として注目を集めてきた。2020年7月にZOZOと資本業務提携契約を締結、一旦、同社の傘下に入ったが、23年12月の東証グロース市場への新規上場に伴い、現在はZOZOのその他の関係会社となっている。24年3月期の売上高は約43億円。
一方、「Her lip to」は「今着たい服」をテーマに小嶋氏がプロデュースするアパレルブランドで、18年6月20日にリリースされた。「リリース当時は小嶋氏が所属する芸能プロダクションがブランドの運営を担っていたが、20年に『N.D.Promotion』に勤めていた戸高純氏(共同創業者)が『heart relation』を設立し、営業権を譲受した経緯がある」(大手信用情報機関幹部)とされる。
「heart relation」の服は、「アラサー向けの普段着が中心で、小嶋氏による徹底したマーケットインによる〝女性のカワイらしさのツボ〟を押さえた商品群が人気の秘訣(ひけつ)」とされる。価格帯はおおむね5000円から4万円の範囲内で設定されている。23年12月期決算は売上高が30億円近くと見られている。
ただ、「芸能人が手がけるアパレルは、一度ブームに火がついても長続きしないことが多い」(大手信用情報機関幹部)と言われている。経営面では、会社の成長に財務や管理部門などの組織の整備が追い付かず、脆弱(ぜいじゃく)さを抱える企業も少なくない。
その点も含め、「小嶋氏は東証グロース市場に上場する『yutori』の子会社になることで、創業者利益を得るとともに財務・管理部門の充実、さらに上場メリットも手にするトリプルメリットがある」(メガバンク幹部)。小嶋氏の経営者としての手腕には唸(うな)らせられる。
(森岡英樹)