国立の旧帝国7大学や早慶大といった難関大の合格者に占める東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)の高校出身者の割合が、ここ15年で急増している。背景には東京圏における受験熱の高まりがあるとみられ、地方との格差が広がっていると指摘する声もある。
『サンデー毎日』や教育専門通信社「大学通信」が毎年実施する高校への調査などを基に分析。旧7帝大(北海道、東北、東京、名古屋、京都、大阪、九州)については、大学入学共通テストの前身・大学入試センター試験が始まった1990年度から2023年度入試(23年4月入学)までの合格者数をまとめ、地域ごとの変化をたどった。
その結果、旧7帝大に合格した東京圏の高校出身者は08~23年度の15年間で1・68倍に増加。全体に占める割合では11%から9ポイント増の20%になった。
東京圏にある高校の合格者数は90年度に3147人だったが、23年度は3780人で1・2倍に増えた。一方、東京圏以外は90年度の1万5887人が、23年度には1万5067人となり5・2%減っている。
人口変動の影響を排除するため、各地域の18歳人口に占める旧帝大合格者数の割合でも比較した。その結果、東京圏が2・09倍、東京圏以外が1・76倍となり、少子化の影響でともに比率が上がる中でも、東京圏の方が伸びが大きかった。
その要因として、東北大や北海道大など地方にある旧帝大の合格者が増えたことが挙げられる。東北大は全合格者に占める東北6県の割合が08年度ごろから下がった。その一方、東京圏出身者の割合は上がり、合格者数は23年度までの15年間で1・98倍に増えた。
一方、早慶は同様の手法で90年度から24年度入試(24年4月入学)までを調べた。総合格者数(併願による重複含む)は早大が12年度の2万2192人をピークに減少傾向にあり、近年は1万5000人前後で推移。慶大も同様に11年度の1万246人が最多で、それ以降は8000~9000人台となっている。
このうち東京圏にある高校の合格者数の割合は、早大は09年度に63%だったが、24年度は76%と13ポイント増加。慶大も同様に62%から13ポイント増の75%になった。いずれも付属・系属校からの内部進学者数については非公開のため、実際の割合はこれより高くなるとみられる。
東京圏の合格者数が増えた背景の一つに中学受験熱の高まりがある。学習指導要領の改定により、公立学校では02年度から「ゆとり教育」が本格化。だが、進学に熱心な保護者の間で学力低下への危機感が高まり、東京圏では私立中高一貫校などを受験するトレンドが生じ、国私立高では大学合格実績が向上している。また、東京圏は、塾や予備校のサポートも手厚い。
教育を巡る格差に詳しい松岡亮二・龍谷大准教授(教育社会学)は「地方から難関大に挑戦しづらくなり、受験機会と受験結果の双方で格差がさらに広がる恐れがある」と指摘している。
(伊澤拓也)
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◇いざわ・たくや
1980年生まれ。毎日新聞社会部副部長。2017年から2年余り文部科学省を担当した。デジタル編集本部を経て現職