教員の人材難は、残業代の制限や長時間労働など、「ブラック」なイメージが浸透したこともあり、全国的に深刻だ。その一つに教員採用に関する問題が挙げられる。
10月には高知県教育委員会が、2025年度の小学校教諭の採用について、合格通知を出した280人のうち、すでに7割超の204人が辞退したと発表した。採用予定人数の130人に大幅に届かず、13人の追加合格を出した上で、12月には2次募集も行う。
教員の離職問題も深刻だ。育休・産休の取得増や病気などで休養する教員の代替要員の確保が難しく、年度途中に教員不足が拡大する現象も起きている。教員らでつくるNPO法人「スクール・ボイス・プロジェクト」の調査では、公立小中学校教員の約6割が「教員が不足している」と訴えていることもわかった。
NHKは、全国68自治体の教育委員会に、小・中学校と高校、特別支援学校の教員不足の状況について聞き取り調査を行い、43自治体の回答を得た。そのデータによると、今年5月と9月時点での教員の不足状況が約1・3倍にまで膨らんでいる。こうした厳しい教育現場の状況を、最近退職を決めた教員と現職の教員はこう語る。
「平日は授業準備に追われ、土日も部活動や検定試験の事務・監督などで出勤が続く中、私自身も体調を崩してしまいました。授業することは好きで続けたい気持ちもあったのですが、このままでは体調管理や子育てとの両立も不可能だと感じ、最近転職しました」(公立高校元教員)
「休んだ先生の分を助け合う必要性は、どの先生もわかっているのですが、どの先生も空き時間がありません。私の学校も教員が休職して不足しているのですが、他の先生が十分な授業準備ができないまま教えなければならない状況です。休む先生が増えると、さらに業務量が増え、先生が精神的に追い詰められる悪循環があります」(小学校教員)
こうした人材難に対して、現場はどのように対応しているのか。全国の公立小学校では5・6年生を対象に、外国語・理科・算数・体育の4科目について、教科ごとの専門の教員が授業を行うことで、担任の教員の負担を軽減する教科担任制の導入を進めている。
また、小学校に限らず、中学・高校などでも人材減への対応として、学校図書館の司書や、部活動指導員などに非常勤公務員を任用する「会計年度任用職員」に頼る学校もある。しかし、こうした対処法は、根本的な解決にはつながっていない。学校以外の組織へ転職経験のある元教員は、離れて初めて教育現場の異質性に気づいたと語る。
「教育現場では、労務管理の意識が一般企業に比べて低い。教育委員会、管理職、そして現場で働く教員自身すら、現場の労働環境を変えようとする意識がありません。この状況が今後も続けば、教員志望者の減少傾向はますます加速し、人手不足による教員の多忙化や、教員の質の低下に拍車がかかることは間違いありません」(公立高校元教員)
ギリギリの状態の運営を続ける教育現場の現状。さらなる教員の働き方改革と処遇の改善が求められる。
(濱井正吾)
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◇はまい・しょうご
1990年生まれ。教育ジャーナリスト。ニックネームは「9浪はまい」。9浪目で早稲田大教育学部に入学した。著書に『浪人回避大全』