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2024年11月24日号
夫婦別姓導入など法改正迫る 国連の女性差別撤廃委員会が勧告
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 国連の女性差別撤廃委員会は日本政府の女性政策について、改善のための勧告(最終見解)を公表した。教育や雇用、女性の政治参加など日本が勧告を受けた分野は多岐にわたるが、中でも選択的夫婦別姓の導入と、性と生殖に関する健康と権利(SRHR)に厳しい視線が注がれた。勧告を受けて、こうしたジェンダー課題に取り組むNGO4団体の代表者らが11月1日、都内で会見し、国に早急な対応を訴えた。

 最終見解では、夫婦同姓を定める民法750条の改正▽緊急避妊薬を含む現代的な避妊中絶を選ぶ権利▽人工妊娠中絶に配偶者の同意を必要とする母体保護法の改正などについて、2年以内に改善へ向けた取り組みの報告を求める重要項目に位置付けた。

 スイス・ジュネーブで10月17日に開かれた審査会合では、内閣府、厚生労働省などの政府代表団が出席。内閣府男女共同参画局の担当者が、旅券や身分証、不動産登記などで進めてきた旧姓の通称使用拡大について説明したが、勧告は「夫婦同姓を定める民法750条の改正の措置は何ら前進していない」と断じた。

 選択的夫婦別姓を求める一般社団法人「あすには」の井田奈穂代表理事は「通称使用では、女性の不利益の解消に限界がある。国が何一つやってこなかったとの評価を受けた意義は非常に大きい」と説明。「2025年の通常国会で法改正を実現するため、各党へも働き掛けを強める」と強調した。

 さらに勧告では、母体保護法改正と併せて、性交後72時間以内の服用が必要な緊急避妊薬について、すべての女性が入手しやすい環境整備について言及。厚労省が昨年11月から緊急避妊薬を一部薬局で販売する試験事業を始めたが、高額なことや16、17歳は保護者の同伴が求められるなど、若年層の入手に制約は大きく、本格導入の見通しは立っていない。

 国連の女性差別撤廃委員会は、女性差別撤廃条約の締約国が実践する差別解消への取り組みを監視。不十分と判断された施策や法制度については、最終見解を通じて勧告する。

 NGO団体側は条約には「法的拘束力がある」との見解を示しているが、政府は選択的夫婦別姓の導入や特例を除いて妊娠中絶に刑事罰を科す堕胎罪の廃止など一部の法改正を見送り続けてきた。司法の場でも条約が国内で適用される法規範とみなす向きは薄い。

 選択的夫婦別姓を求める集団提訴では、国連が勧告を繰り返す中、15年と21年に最高裁が合憲と判断。今年3月には3回目となる同様の集団提訴がなされ、今回の最終見解が司法判断に影響を与えるかが注目される。

 今回の最終見解では「司法や法執行機関においても条約の理解や適用が不十分」だとの懸念を表明。井田さんは「条約を軽視し、国内法を正当化することはもはや許されない。勧告を生かした立法が進むよう、行政、司法、経済界などあらゆる分野に発信を続けたい」としている。

(渡邉麻友)

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 ◇わたなべ・まゆ

 1986年、横浜市出身。信濃毎日新聞記者を経て、2023年からフリー。生活ニュースコモンズ記者

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