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2024年11月10日号
「うたごえ」は永遠に不滅? 津軽の町にファン180人が集結  
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 青森県西津軽、日本海沿いの深浦町に1013日、全国から「うたごえ」のファンが集い、フォークやロシア民謡などを思う存分とどろかせた。70年余の歴史を持つうたごえは、1960年代のうたごえ喫茶に象徴されるように、肩を寄せ合いみんなで声をそろえ、同じ歌を歌って楽しむグループイベントだ。

 深浦町でのうたごえの集いを主催するのは、深浦町在住で元高校教師の佐藤英文さん(79)と地元で保育の仕事に携わってきた英子さん(77)夫妻。ともにうたごえ歴は半世紀を超えるが、50代のとき全国各地の集いに参加したり、インターネットでうたごえファンと交流を深めたりするなかで、地元深浦でもファンを招いてみようと、2003年から毎年「深浦のうたごえ」イベントを開催。しかし19年を最後にコロナ禍で中断、また英文さんが体調を崩したこともあり、今回5年ぶり18回目の開催となった。「不安でしたが予想外に多くの人が来てくれ、再会できてよかったねーという声が聞かれてうれしかった」と英子さん。

 深浦町は、青森空港からレンタカーで、また新幹線新青森駅から奥羽本線―五能線を乗り継いでも2時間半余りかかる。参加を予定していた180人のうち、大半は泊まりがけで来るので、町内の深浦観光ホテルを貸し切りにして、ホテル内のホールで開催した。

 青森県内各地をはじめ大阪や長野、東京、神奈川、千葉、埼玉、栃木、仙台、札幌などから、ある人はマイカーや鉄道で、また、首都圏からの参加者は仙台のうたごえの店「バラライカ」で前夜祭をしたのち、仙台からの参加者とともに大型バスで深浦に乗り込んだ。深浦町は、第三セクターによる観光施設は近年つぎつぎ閉鎖、地元の高校も昨年3月で閉校。人は出て行くばかりのなかで、一個人のイベントによるこれだけの集客は「経済効果もすごい」と地元でも驚きの目で見られている。

 午後5時からのイベントは、13部に分かれ、1部は、ともしび新宿店で司会も務めていた森のフクロウさんのリードでまず、ザ・ブロードサイド・フォーの「若者たち」、トワ・エ・モアの「空よ」、そしてロシア民謡の「山のロザリア」を合唱、続いて参加者のリクエスト曲を次々にみんなで歌っていった。

 2部でシンガー・ソングライター山本さとしさんの歌を挟み、3部は、佐藤夫妻の司会でリクエストに基づき地元にちなんだ「深浦の空」「城下町弘前」からはじまりさまざまな歌が延々と続き、最後はこれまで同様「今日の日はさようなら」で締めくくった。この後は交流会となり、のど自慢などが登場、10時半にお開きとなった。

 1950年代、社会・労働運動の文化政策として広まったのが「うたごえ運動」だった。英文さんは「いまのうたごえは、うたごえ運動のうたごえと、うたごえ喫茶から生まれたうたごえがあるようで、私たちのはうたごえ喫茶的なもの。70代がほとんどですが、来年もまたみんなの力をかりてやってみたい」と話している。

(川井龍介)

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 ◇かわい・りゅうすけ

 1956年生まれ。ジャーナリスト。毎日新聞記者などを経て独立。著書に『数奇な航海 私は第五福龍丸』『別れのサンバ 長谷川きよし 歌と人生』(監修)など

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