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2023年度の大学生の就職率は98・1%を記録した。過去最高の「売り手市場」を迎える中、注目を集めている就活サービスがある。
その名前は「ABABA」。最終面接で落ちた就活生が登録でき、就職活動の「過程」を評価した他企業からのスカウトが届くサービスだ。24年9月現在、総学生ユーザー数は7万人、登録している企業ユーザーは1600社を超えており、会社には学生側・企業側の双方から、たくさんの喜びの声が届く。
「最終面接の時も『落ちてもABABAがある』という安心感がありました」(学習院大4年、ベンチャー企業内定)
「今まで見ていなかった企業や業界にも視野を広げることができました」(新潟県立大4年、人材派遣会社内定)
「内定辞退が出たのですが、ABABAを使ったおかげで、その分を補完することができました」(メーカー企業人事)
サービスを提供する「ABABA」社長の久保駿貴さんは、特徴的な社名に込めた思いをこう語る。
「大学4年のとき、親友が企業の選考で落ちて、すごく落ち込んだんです。その友達が『あばばばば』とラインの文面で送ってきたので、彼や彼のように困っている人の気持ちを忘れないようにしたいと思い、命名しました」
久保さんはこれまでも、インバウンド旅行者と日本でガイドをしたい人のマッチングや、飲食店のクラウドファンディングを支援するアプリを作るなど、「自分があったらうれしいと思う」人のためになるサービスを提供してきた。「人の役に立ちたい」という思いは、自身の挫折経験が大きい。人生で最もつらかったことに、兵庫県の名門校・明石北高校から神戸大を志望するも、高校時代・浪人時代と2回不合格になったことを挙げた。
「周囲に比べていい大学に行けなかったことで、コンプレックスがすごかったんです。SNSも消息を絶ちましたし、成人式にも顔を出せませんでした」(久保さん)
2回目の神戸大の受験では、合格最低点からわずか3・66点届かない無念の惜敗。自身がわずか1~2問の差で人生の明暗が分かれた経験があったからこそ、7~8次まであるような企業の選考で、最後まで進んでも落ちた就活生に、かつての自分を重ねた。
「受験では、たまたま1問合っていて受かった人と、たまたま1問失敗して落ちた人の差は、ほぼありません。でも、『結果』で差ができてしまう。得点を取るまでの『過程』は可視化されないし、評価もされない。就活も受験も同じ。落ちた人が前向きになれる仕組み、頑張りを評価する仕組みを作りたいと思いました」(久保さん)
「自分が就活をやっているときにあったらすごく励まされるもの」だと確信して作ったサービスは、大勢の就活生を励ましている。久保さんは今年、世界を変える30歳未満の日本人として、「ForbesJAPAN 30 UNDER 30」に選出された。今後もABABAを使って人生を前向きに生きる人が増えていくだろう。
(濱井正吾)