高さ2㍍を超える木製のジャングルジムを、幼児や小学生が自分たちで組み上げる。そんな経験ができる遊具「くむんだー」が各地に広がっている。木材に親しんでもらう〝木育〟の一環だが、今年度から徴収が始まった森林環境税の使い道としても関心を集めそうだ。
愛知県新城(しんしろ)市の作手(つくで)小学校では7月、4・5年生25人が参加した体験授業があった。柱となる木材に、貫(ぬき)と呼ばれる横材を差し込み、木づちでくさびを打って固定していく。
どの木材を使うかパズルのように考える要素もあるが、高学年がいたので大人の手はほとんど借りず、互いに声を掛けながら作業を進めた。高さ約2・5㍍のジャングルジムは、1時間ほどで出来上がった。
その熱心な姿に教諭らは、「普段の授業とは集中力が違う」と目を見張った。
講師を務めた新城市内の工務店の鈴木太社長(44)は今年から、くむんだー体験のため、小学校やこども園に出向くようになった。「地元にたくさんある木の良さと、力を合わせて物づくりをする楽しさを知ってもらいたい」と狙いを語る。
新城市は8割以上が森林に覆われた地域で、木材はすべて市内のスギを利用し、大工が手作業で加工した。
驚かされたのは、このジャングルジムの構造の丈夫さだ。児童が20人ほど乗っても危なげがない。1本1本の材は子供が持ち運べるほど軽いのに、柱と貫を組み合わせていくことで強度が高まるという。
くむんだーは、滋賀県東近江市で工務店の3代目を務める川村克己さん(68)が発案し、2011年に実用化した。川村さんは「日本の家造りの技術を知ってもらいたかった。パネル展示では手応えがなかったので、伝統的な貫工法でジャングルジムをつくってみた」と振り返る。
川村さんの設立した「全国『くむんだー』木のジャングルジム協会」には、趣旨に賛同した工務店などが加盟する。現在、東北から九州まで約40の団体が体験活動を行っている。
木育に熱心な自治体がくむんだーの人気に目を付け、事業として展開する例もある。
岐阜県郡上(ぐじょう)市は3年前から市内の団体「くむんだー郡上」に委託し、小学校、幼稚園などで活動を実施。その費用には、国から交付される森林環境譲与税の一部を充てている。
森林環境譲与税は森林整備、木材利用促進などに使える財源として19年度から自治体に配分されている。一方、今年度からは、その元手となる森林環境税の徴収が始まり、個人住民税に上乗せする形で1人年1000円が課されている。
その総額は国全体で年600億円ほど。森林の少ない都市部などでは何に使うか頭を悩ませているとも言われる。せっかくの財源を遊ばせておくようなことはせず、子供が熱中できる「遊び」にも振り向けてみてはいかがだろうか。
(橋本謙蔵)