最大震度7を観測した元日の能登半島地震は、発生から半年が過ぎた。仮設住宅は計画の7割が完成したものの、今も2000人以上が避難生活を送る。住民が仮設住宅に移っていく上で欠かせないのが「見守り支援」だが、サポートをする人手が足りないという。
6月上旬、筆者は石川県能登町で、仮設住宅に移り住む人たちをサポートするボランティア活動を行った。滞在した復興支援ボランティア拠点は一軒の古民家で、20人ほどのボランティアが寝泊まりできるスペースがある。〝自給自足自立〟が基本の災害ボランティア活動において、寝る場所、食べる場所、トイレと風呂が確保されている点は心強い。
ボランティア拠点を運営しているのが「災害支援JOCA能登チーム」。プロジェクトマネジャーの山中弓子さんは「取り残される人がないように、孤独な人がでないように活動している」と話す。山中さんは看護師・防災士で、熊本地震や西日本豪雨災害などの現場で活動してきた災害看護支援の専門家だ。
チームの主な活動に「仮設住宅での見守り」がある。5月、輪島市の仮設住宅で1人暮らしの70代女性が亡くなった。「どうすれば孤独死を防ぐことができたのか」。これ以上犠牲者を出さないためにと現場で自問自答が続く中、山中さんは現状をこう話す。
「被災状況や生活再建に関する要望の聞き取りなど、聞き取りに行く人数が足りない。以前の被災地では、ローラー的に聞き出していくケースもあったが、ここではそこまでできていない。まだSOSを出せていない被災者もいると思う」
懸念されているのは「生活不活発病」。周囲の道が危なくて歩けない、職を失った、することがない......。そんな理由から動かない人が増える。避難生活の中で炊事や掃除の頻度が減り、庭いじりや農作業ができなかったり、地震の後だからと遠慮して散歩やスポーツ、趣味をしなくなったり。居所が変わることで人との付き合いが薄れ、外出する機会も少なくなる。
そうしたことが積み重なると、生活不活発病が発症しやすいといわれる。症状はさまざまで、心肺機能の低下や立ちくらみ・めまい▽食欲不振や便秘▽筋力の低下や床ずれ▽うつ状態や周囲への無関心――などが挙げられる。
チームは仮設の見守り活動の一環として、集会所などで健康のための体操やレコード鑑賞、お茶会などのレクリエーションを実施。参加を呼びかけることをきっかけに、何気ない会話のやりとりから被災者の健康状況や困り事を察知していく。
「1人でも孤独な状況の人を減らす。そのために、情報、ヒト、モノ、なごむ場の提供などありとあらゆることをする」と山中さん。目的を持って穏やかにヒアリングをすることが、要支援者を浮かび上がらせることにもつながるという。
「地域だけで進んでいくのは次の段階で、まだ外部から関わっていくことが必要。現場の行政職員も初めて経験することが多い。今の段階を見ておくという意味や研修する意味もあっていいから、行政の職員にも応援に来てほしい」
そう呼びかける山中さん。能登でボランティアができる活動はたくさんある。
(船本由佳)