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2024年5月 5日号
社会 カネで夢が買えるのか! 大阪万博につぎ込む皮算用
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 来年4月13日に開幕予定の大阪・関西万博まで1年を切ったが、暗雲は晴れない。会場建設費は当初の1250億円の約1・9倍にあたる最大2350億円に膨らみ、運営費も当初の約1・4倍の1160億円に増額された。カネで夢が買えるほど現実は甘くない。

 大阪府の吉村洋文知事は4月16日、海外パビリオンの建設について、参加国が自前で建設する「タイプA」は当初の60カ国から40カ国程度になると明かした。海外パビリオンのうち各国の独自性が出るタイプAは「万博の華」とされる。その一方で、複雑なデザインや商習慣の違い、資材価格高騰などが原因で、建設業者との契約が難航している。

「割安でお買い得」と昨年11月から販売する前売り入場券の販売も芳しくない。これまでの売り上げは、日本国際博覧会協会が開幕までの販売を目指す1400万枚の1割に満たない。それも大半は企業の国や大阪府市への「義理購入」。協会事務局は個人購入に期待するが、義理もない個人の購入が多いはずもない。

 吉村知事は「小中学校単位で万博に来てもらう」とし、複数回の来場を提案した。だが、保護者に払わせるわけにもいかないだろう。税金による穴埋めの公算が大きい。

 協会事務局は「経済効果は2兆円」とするが、国や自治体が御用学者らにはじき出させる「経済効果」を信じるほど浪速(なにわ)っ子は愚かではない。在阪テレビ局が4月13日前後にこぞって特集を組んでPRしたものの、「周囲で聞いても誰一人行きたがってない」(大阪府池田市の65歳の主婦)などと白けている。

 さらに能登半島地震で呻吟(しんぎん)する人たちへの共感から「万博に巨額の無駄金を使っている場合ではない」との声が高まる。当然だ。政府の「復興は土木、万博は建築で別」という声も屁理屈(へりくつ)にしか聞こえない。

 大阪・関西万博の誘致は、「2008年大阪五輪」の誘致に失敗したことに端を発する。初めに開発ありきで「負の遺産」となった人工島「夢洲(ゆめしま)」への批判をかわそうとしたものだ。「1970年の夢をもう一度」と万博を誘致し、閉幕後はカジノなどにするとしていた。

 言ってみれば立候補の動機こそ、不純だった。それを「純粋」「崇高」に装う大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。

 万博の中止を呼び掛ける神戸大大学院の小笠原博毅教授(社会学)は「誰が本気で開催したがっているのかもみえず、多額の税金を使いながら中身が空疎」と批判する。

 抽象的スローガンで大風呂敷を広げるより、災害大国として、災害をテーマに最新の防災対策や避難設備、避難所などを展示した方がまだ有意義ではないか。

(粟野仁雄)

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