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2024年4月28日号
社会 メガネが作れないなんて! レンズ供給ストップで混乱
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 手元から遠くまで自然に見えるようにしたい、パソコンやスマホを見るときに使いたい、目が疲れるのを防ぎたい......現代社会において、目にまつわる人の悩みはさまざまだ。それゆえ、特殊なレンズが必要になってくる。そんな〝メガネ事情〟を揺るがす事態が勃発した。

 国内の眼鏡用レンズのシェアがトップの光学機器大手HOYA(東京都新宿区)でシステム障害が発生し、眼鏡用レンズの受注や発送ができなくなったのだ。大手の眼鏡チェーン店を中心に、「眼鏡をすぐに作れない」という影響が出ている。

 HOYAによると、複数の製品に関して工場のシステムが停止。原因はサーバーへの不正アクセスによる可能性が高いとしている。障害が起きたのは3月30日で、東京の本社と海外も含めた事業所でシステムがダウンし、生産や受注などの業務ができなくなった。不正アクセスの影響とみているが、サイバー攻撃が国内からなのか、海外からなのかは調査中という。

 半導体の製造に使う装置や医療用の内視鏡なども扱うHOYAでは、企業情報や個人情報の流出がないかも調査している。この影響で、HOYAとセイコーグループが出資するセイコーオプティカルプロダクツでも障害が起きた。

 困ったのは眼鏡屋さん。大手チェーンの「JINS(ジンズ)」では、在庫が多い通常のレンズにはほぼ影響はないものの、注文レンズや特殊なレンズなどが取り扱えない状態に。3月31日から、カラーレンズやブルーライトをカットするレンズなど特殊なレンズの取り扱いを一時停止した。

 神戸市のJINSでは「別のメーカーからも入荷して不足分を補っていますが、HOYAさんでしか作っていないレンズの入荷が滞っています」と話す。

 JINSのほかにも「Zoff(ゾフ)」、「眼鏡市場」などでも納期の遅れや一部レンズの発売停止に追い込まれた。眼鏡チェーン店はこぞってHOYA以外のメーカーからレンズを取り寄せて対応したが、メーカーの数は限られている。今度は他のレンズメーカーに注文が殺到し、供給が逼迫(ひっぱく)状態になった。

 眼鏡レンズを製造する東海光学は、注文の集中する状況が「2週間以上は続く見込み」「特注レンズの納期は一律4日加算する」と眼鏡店側に通知した。従業員の残業時間を増やすなどして対応しているが、今後については「HOYAさんの回復状況次第でわからない」とのこと。ニコン系列のメーカー、ニコン・エシロールも納入が遅れており、影響が長期化する可能性もある。

 おしゃれ眼鏡は別だが、普段から眼鏡をかけて生活している人にとって体の一部とも言えるため、度が合わなくなって買う時くらいしか特別に意識はしない。しかし、筆者も昨年暮れに遠近両用眼鏡を購入した際、年末年始でレンズの入荷が遅かっただけで不便した。一刻も早い「復旧」と原因究明を期待したい。

(粟野仁雄)

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