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2024年4月21日号
社会 パンダのタンタンが大往生 阪神大震災復興のシンボル
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 神戸市立王子動物園は4月1日、人気者のジャイアントパンダ「タンタン(旦旦)」(雌)が死んだと発表した。28歳だった。心臓疾患に起因する衰弱死で、最近はかなり弱って公開も中止していた。

 タンタンは国内最高齢パンダで人間なら100歳近くに相当。野生パンダの寿命は約20年、飼育パンダは香港で38歳というギネス記録がある。16頭の子供を持つことで知られ、30歳の国内長寿記録を持っていたアドベンチャーワールド(和歌山県)の永明(エイメイ)は昨年、中国に戻った。

 タンタンは3年前に心臓疾患が見つかり、中国からも獣医らが来日して合同チームで治療にあたっていた。3月31日午後10時ごろ、マットの上で動かなくなっているのを宿直の飼育員が発見し、心臓マッサージなどを施したが息を吹き返すことはなかった。

 1995年の阪神・淡路大震災から5年後の2000年、タンタンは初代コウコウ(興興)とともに来日した。愛くるしい姿で被災地の親子らの笑顔を取り戻し、「神戸のお嬢様」として親しまれてきた。

 2頭の来日は日中の共同繁殖飼育研究も目的だった。ところが、パンダの雌雄判別は難しく、雄として来日した初代コウコウは「生殖能力不足」として中国に返還され、「雌では」という報道もあった。代わりに来日した2代目コウコウとは人工授精には成功したものの、死産や生まれた赤ちゃんが死に、結局、タンタンは子宝に恵まれなかった。

 コウコウが10年に死んでからは、同園唯一のパンダとなった。20年に中国との貸与契約が満了となり返還が決まっていた。しかし、コロナ禍で輸送が難しくなった時に重病が判明し、神戸での治療を延長していた。今後、中国から同園への新たなパンダの貸与については未定という。

 4月2日から同園に置かれた献花台には市民が次々と訪れ「一つ一つの思い出が宝物のようです。ありがとう」と涙にくれる女性も。飼育員の梅元良次さんは「本当に愛されていたんだなと思います。嫌な薬も毎日頑張って飲んでくれて胸が熱くなっていました」と感慨深げだった。

 筆者は震災被災者ではないが、00年の春に神戸市に転勤した直後の7月にタンタンと初代コウコウが来日。神戸は空前のパンダブームとなり、2人の子供を連れて早速見に行った。

 ちょっと短い脚に丸い体形のタンタンは「あかんべえ」をするようなおちゃめな姿を見せて、子供たちは大喜び。それから20年以上経(た)って孫を連れて行くと、元気に笹の葉を食べて愛嬌(あいきょう)を振りまいてくれた。長生きしてくれたタンタン。故郷の中国に帰れなかったことは申し訳ないが、楽しい思い出をありがとう。

(粟野仁雄)

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