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2023年12月31日号
旧統一教会の被害者救済法で再注目の元「宗教2世」准教授
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 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の献金被害者救済に向け、教団の財産監視を強化し解散命令前の流出を防ぐ特例法が、12月13日に閉幕した臨時国会で成立した。信者の親を持つ「宗教2世」への支援も叫ばれる中、京都府立大の横道誠准教授(44)が立ち上げたオンライン自助グループ「宗教2世の会」が改めて注目されている。 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の献金被害者救済に向け、教団の財産監視を強化し解散命令前の流出を防ぐ特例法が、12月13日に閉幕した臨時国会で成立した。信者の親を持つ「宗教2世」への支援も叫ばれる中、京都府立大の横道誠准教授(44)が立ち上げたオンライン自助グループ「宗教2世の会」が改めて注目されている。

 新宗教に入信した親により苦しんだ経験を持つ宗教2世でもある横道氏は、「大人は入信するもしないも自分の判断ですが、生きるために親に従うしかない子どもが問題です」と語る。母が夫婦仲の悪化もあり、キリスト教系の新宗教「エホバの証人」に入信した。

 横道氏は幼いころ、集会へ連れられ、母親が気に入らない言動があると、家でガス管のゴムホースで尻を激しく叩(たた)かれた。「『愛しているからだ』と抱きしめられたが、教育でも何でもない。教団の意向に合うようにマインドコントロールしているだけ」と振り返る。それでも母を喜ばせようと教義を懸命に勉強した。ただ、ある年の母の日にカーネーションを渡したら激怒された。教団では贈り物が禁じられていた。

 新宗教もさまざまで大学を持つものもあるが、母の教団は高学歴を否定していた。「私は大学には行けましたが、母はPTA活動をするなど、教育熱心で教団の考えと違い、正式な信者として入信するのに年数がかかりました」。横道氏自身は教義に不信感を覚えて教団を離れた。現在では母とは音信不通という。

 横道氏は「DV(ドメスティックバイオレンス)などには存在する『受け皿』が宗教2世にはなかった」と、3年前に会を立ち上げた。現在は月1度、オンラインで語り合う。「多すぎると全員の声が聞けません。だから、1回10人くらいで語り合います」。人間関係がうまくいかないのは、宗教の影響ではと悩むメンバーもいるという。

 安倍晋三元首相の銃撃事件で、殺人罪などに問われている山上徹也被告には現在、宗教2世からの手紙が多く寄せられているという。「山上被告に自分の記憶を重ねているのでしょう。事件で2世の苦悩が報じられ、当事者も少しずつ自分を客観的に見つめ直せるようになっている」(横道氏)

 一方、フランスの「反セクト法」のような法律が必要という。「信教の自由を振りかざされた際、後ろ盾となる法律がないと家庭に介入することもできません」と横道氏。2世への差別もあり、「『カルトに入っていた』というレッテルを貼られ、就職も差別される場合があり、2世はしばしば生活も苦しい」(同)

 会の目的は救済ではなく、あくまでも自助だ。似たような経験を持つ者が語り合う中、各自が解決を探る。「行き場がなく、別のカルト集団に入ったり、アルコールやギャンブルの依存症になったりする人もいます。『宗教2世』の被害者は、宗教は懲り懲りと思っている人が多いです」(同) 専門はドイツ文学。「最近は宗教2世の問題を書くことも増えました。人生は文学ですから」。銃撃事件が起きる前から、宗教2世の苦難を訴えてきた横道氏。活動に期待したい。


(粟野仁雄)

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