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2022年1月16日号
金融 黒田・日銀の金融機関支援策 「本来の政策領域?」と批判も
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 地方銀行など地域金融機関を手厚く支援する日本銀行の制度の対象となる機関が予想外に急増したため、日銀が制度を見直す事態になっている。

 制度は日銀が2021年度に運用し始めた「地域金融強化のための特別当座預金制度」。日銀当座預金の残高に適用する金利を最長3年間、年0・1%上乗せするというものだ。全国銀行協会の髙島誠会長(三井住友銀行頭取)は21年12月16日の記者会見で、「地域金融機関のビジネスモデルの改革やさまざまな経営努力の後押しになっているのではないか」と評価した。

 黒田東彦(はるひこ)総裁が率いる日銀は制度を設計した当初、対象となる地域金融機関は全体の1割と見込んだ。実際には同年4〜9月、農協300、信用金庫142、地銀86など計631機関に上った。信金の59%、地銀の91%が対象になった計算になる(分母となる機関数は同年12月1日現在、財務省調べ)。支援総額が当初予想の700億円を大幅に超えたことから、日銀は金利上乗せの対象となる金額の上限について見直す。

 これとは別に、日銀は20年3月、「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション」を導入した。企業の資金繰りが悪化しないように日銀が金融機関を優遇する措置だ。利用残高は21年11月26日時点で約80兆円に積み上がっている。髙島氏は「非常に厳しい状況下において、企業倒産の抑制や金融市場の安定化に確実に寄与している」とした。

 日銀の見込みをはるかに上回る利用はそれだけ地域金融機関の業績が厳しいことの表れなのか。しかし、金融関係者からは「日銀による一連の金融機関支援策は本来の政策領域を超えている」という批判も上がっている。

(森岡英樹)

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