JR西日本は10月2日、ダイヤ改正のたびに作製し、駅で無料配布してきた在来線用の「ポケット時刻表」を廃止した。蛇腹に折り畳める「名刺型」や新書判サイズの「冊子型」があった。同社の広報担当者は理由をこう説明する。
「インターネットやスマートフォンで発着時刻を検索する人が増え、紙の時刻表の需要が減少しています。また、新型コロナウイルスの感染が拡大し、非対面・非接触のサービスが求められています。その中で感染予防や紙の消費量を抑制する観点から廃止を決めました」
無料の割には立派な文庫本サイズの冊子型を配布してきたJR九州も、3月のダイヤ改正をもって廃止した。今回、JR西が続いたことで、JRグループの在来線用はなくなった(新幹線用は残る)。他の事業者のうち、京阪電気鉄道、阪急電鉄、小田急電鉄、西日本鉄道、名古屋鉄道はいずれも今年、廃止している。感染拡大の余波で事業者の収支が悪化したことも影響したようだ。
残念に思う人もいる。兵庫県明石市に住む鉄道ファンの会社員男性(65)はその一人。
「ダイヤ改正のたびに乗車駅、乗換駅、降車駅で、一目で一日の発着時刻が分かるポケット時刻表を集めていました。スマホはすぐ乗りたい列車を調べるには便利ですが、何時間かたった後の列車は調べにくい。残してほしかったですね」
パソコンやスマホの普及で印刷物が次々と消えている。JR西日本は「駅に掲示している時刻表をご確認ください」(広報担当者)とするが、何度も駅に行くのがつらい高齢者には、鉄道の旅は不便になるかもしれない。
(粟野仁雄)