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2021年9月26日号
カルチャー 世界60種類の料理をレトルトで買える「世界のごちそう博物館」
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 全日本空輸は9月6日、昨年12月からインターネットを通して販売している国際線エコノミークラス機内食が、累計100万食を突破したと発表した。コロナ禍で乗客数が激減した航空会社と、旅の機会を奪われた利用者がネット上で幸せな出会いを果たしたということだろう。

 この例のように食料品の通信販売は全般的に好調だ。内容も広がりをみせている。中でもユニークなのが「世界のごちそう博物館」だ。博物館といっても施設はなく、世界各国の料理約60種類をレトルト加工して、主にオンラインストアで販売(650円〜)している。例えば、写真のガンボはアメリカ南部の郷土料理。ハーブとスパイスが程よく利いた鶏肉と野菜のスープで、オクラのとろみが特徴的だ。

 運営者の本山尚義さんは日本でフランス料理を習得した後、世界30カ国で料理修業を積んだ。帰国後、各国料理の店を17年間経営し、その魅力と意義をさらに多くの人に知らせたいと、この業態を始めたという。本山さんが言う。

「世界の料理を食べることで、その土地で取れた素材でおいしいものを作る知恵や、食材にまつわる侵略の歴史に思いをはせることができる。食文化の伝播(でんぱ)の様態からは地球のつながりを感じられるし、各地の食材と味付けを知ることは、多様な価値観を認めるきっかけになる」

 羊の脳みそ、ラクダ、ワニに世界最大の淡水魚ピラルクーなど、ちょっと驚く食材も。味付けも辛みの段階や、未知の香り、酸・甘・辛の複雑な組み合わせなど、人類の味覚の奥深さをのぞかせる。そして紛争地や貧困地域の料理も少なくない。

 料理を食べながら包み紙裏のイラスト付き解説を読むと、旅情に少しだけ思索の味わいが加わる。

(小出和明)

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