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2021年9月19日号
展覧 五感使って楽しむ作品が並ぶ 大阪で開催「"触"の大博覧会」
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 新型コロナウイルスの感染拡大により「触る」ことが敬遠されがちな世の中に一石を投じるユニークな特別展が9月2日、大阪府吹田市の国立民族学博物館で始まった。

 題して「ユニバーサル・ミュージアム――さわる!〝触〟の大博覧会」。会場には触って体感できる作品約280点を展示。多くの展覧会場に見られる「作品に手を触れないでください」という表示がなく、作品の感触を思う存分、味わうことができる。

 入り口で迎えてくれるのは、国宝に指定されている奈良・興福寺の仏像頭部のレプリカ(複製)。触っていいのかどうか戸惑っていると、同展実行委員長で全盲の広瀬浩二郎准教授(53)の解説映像が流れ、視覚障害者がどのように仏像に触れ、形を認識しているのか実演してくれる。それにならって恐る恐る触ってみる。

「風景にさわる」コーナーには、陶板に凹凸を付けた滋賀県信楽(しがらき)地方の地図、「歴史にさわる」コーナーには、実在する巨大古墳を縮小してひっくり返した「くぼみ」を湯船に見立て来場者が身を沈めてみる作品、「見てわかること、さわってわかること」のコーナーには、さわる絵画や絵本、写真など、触覚だけでなく五感を使って鑑賞できる作品が並ぶ。

 多くのコーナーは照明を暗くしているため、来場者が視覚に頼らず、作品に触ることに徐々に慣れていくような工夫がされている。

 東京パラリンピックに合わせ企画された同展もコロナ禍で1年延期。広瀬准教授は逆境の中、『それでも僕たちは「濃厚接触」を続ける!』という著書を出し、触ることの意味を問い直してきた。

「会場には、触ってみたくなる作品、触らないと分からない作品が並んでいます。全身の感覚、さまざまなセンサーをフル活用して、眠っていた感覚を呼び覚ましてほしい」と、来場を呼び掛けている。

 各コーナーの入り口に消毒液を配置するなど、感染防止には最大限配慮している。11月30日まで。

(井澤宏明)

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